Summer (久石譲の曲)

久石譲「Summer」：映画音楽からCMまで、時代を超えて愛される名曲

久石譲氏の作曲による「Summer」は、1999年公開の北野武監督映画『菊次郎の夏』のメインテーマとして発表されました。映画音楽にとどまらず、トヨタ『カローラ』のCMやキリンビバレッジの企業CMにも使用され、幅広い層に親しまれています。

多彩な音楽性が凝縮された楽曲

「Summer」は、久石譲氏の多様な音楽性が盛り込まれた楽曲として評価されています。『菊次郎の夏』の劇中では、様々なアレンジが施されたものが繰り返し使用されており、サウンドトラック盤ではそれぞれ異なるタイトルが付けられています。サウンドトラックにおける「Summer」は、映画のオープニングで使用された音源を指します。

楽曲は、前半の主題と後半の副題、そして主題の変奏によって構成されています。主題は、映画のメインタイトルやCMで流れる旋律として親しまれています。サウンドトラックでは、「Going Out」「Mad Summer」「River Side」が主題の旋律を使用しており、「The Rain」「Summer Road」の終結部にもその旋律が用いられています。一方、「Kindness」「Angel Bell」「Two Hearts」「Summer Road」では副題の旋律が使用されています。

北野武監督とのエピソード

当初、北野武監督は久石譲氏に対し、メインテーマには「絶対にピアノでリリカル（叙情的）なものを」と依頼していました。久石氏はその意向を受け、叙情的な主題（第1テーマ）と軽快で爽やかな副題（第2テーマ）を作曲しました。しかし、北野監督は副題を気に入り、主題と副題が逆転。久石氏は映画で使用するために準備していた箇所を全て差し替えることになったそうです。

このエピソードについて、久石氏は北野監督の才能を高く評価し、「監督が出した方向性というのは、実は圧倒的に正しい。僕なんかでは太刀打ちできない『時代を見つめる目』がある」と語っています。

セルフカバーによる新たな魅力

久石譲氏は、自身のコンサートやソロアルバムで「Summer」を度々演奏しています。これらのセルフカバーでは、副題を使用せず、主題を中心とした独自の構成が採られており、アンサンブル、ピアノソロ、オーケストラなど、様々な編成で演奏されています。

1999年には、イギリスの弦楽四重奏団バラネスク・カルテットと共演したアンサンブルコンサートツアー「PIANO STORIES'99 Ensemble Night with Balanescu Quartet」で初演。この公演と同編成でレコーディングされたアルバム『Shoot The Violist〜ヴィオリストを撃て〜』（2000年）に初収録されました。

2001年には、「2001 JOE HISAISHI SUPER ORCHESTRA NIGHT」のアンコールでピアノソロが初演され、ピアノソロアルバム『ENCORE』（2002年）にも同アレンジで収録されました。

2003年には、「シンフォニックスペシャル2003〜子供たちとかつて子供であった人たちへ〜」のアンコールでオーケストラ版が初演され、ライブベスト盤『空想美術館』に収録されています。

CM起用による幅広い浸透

「Summer」は、2000年以降、トヨタ『カローラ』のCMに起用され、広く知られるようになりました。カローラセダン、カローラフィールダー、カローラランクス、カローラスパシオなど、様々な車種のCMで使用され、楽曲の知名度を高めました。

2023年からは、キリンビバレッジの機能性飲料CM、および企業CMにも使用されており、新たな世代にもその魅力が伝わっています。

「Summer」は、映画音楽として誕生し、CMを通じて幅広い層に浸透。久石譲氏の代表作として、時代を超えて愛され続けています。

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