T-2CCV (航空機)

T-2CCV: 日本初のCCV技術を有する実験機

T-2CCVは、1978年から1985年にかけて日本の防衛庁技術研究本部によって開発された実験用航空機で、CCV（Control Configured Vehicle）技術を土台にしている。元々はT-2練習機を基にしており、三菱重工業が主契約者として設計と製造を行った。

開発の背景

1970年代に、欧米でフライ・バイ・ワイヤ（FBW）技術が発展し、特にF-16やF-18といったデジタルFBW機体の成功が引き金となった。CCV技術は、従来の航空機設計において空力、構造、エンジンの要素を後から追加するのではなく、操縦装置の機能と性能を初めから計画的に考慮することで、安定性と運動性を同時に高める手法である。日本でも超音速訓練機T-2などの開発が進行していたが、高度な制御技術は不足していた。

開発の過程

T-2CCVの開発は1978年度に始まり、T-2試作3号機を主なベース機として、デジタルFBWシステムとCCVに関する技術の評価と確立を目指した。このプロジェクトでは、モデルによる風洞試験や、初のデジタルFBWコンピュータの設計が行われた。1981年までに各種の部品が設計され、最終的にT-2をCCV研究機へ改造することが決まり、1983年に初飛行を果たす。

特徴

T-2CCVは、三重の冗長性を持つFBWシステムを備えており、以下の5つの制御モードが実装されている：

1. CA（操縦性最適化）: 航空機の操縦応答を一定に保てるよう調整し、パイロットの負担を軽減。
2. RSS（静安定自動補償）: 空力的に機体を不安定にし、安定化を自動で行うモード。
3. MLC（旋回性向上）: 最適なフラップ位置を自動制御し、旋回性能を向上。
4. DLC（直接揚力制御）: 機体そっくりの姿勢を維持しつつ揚力を調整するモード。
5. DSC（直接横力制御）: 横方向の姿勢を保持しながら操作を行うモード。

FBWシステム及び操縦装置

FBWシステムは、冗長なコンピュータアーキテクチャを持ち、主要な操縦信号は手動とFBWの両方で受け付けられるように設計され、安全性を重視した。発生した問題に対する手動操縦への自動切り替え機能も特徴的である。

飛行試験の実施

1984年から1985年にかけて行われた138回の飛行試験では、各モードの機能評価が行われ、CAやDLC、DSCなどの制御機能が実証された。特にCAモードは、ブレない操縦性を実現し、安定した運動能力の確保に成功した。また、DLCとDSCを使用することによって機動性が大幅に向上したことも確認された。

成果と影響

T-2CCVの開発によって得られた知見は、日本の航空機設計において重要な技術的基盤を築いた。特に、F-2戦闘機の開発には、T-2CCVでの成果が活かされ、独自の技術を基盤にした開発が行われた。T-2CCVは、航空自衛隊にとっても貴重な技術支援をもたらし、現在も岐阜かかみがはら航空宇宙博物館に展示されている。

諸元

• - 全長: 17.85 m
• - 全高: 4.39 m
• - 全幅: 7.88 m
• - 重量: 10.1トン
• - 最高速度: マッハ 1.3
• - 搭載エンジン: TF40-IHI-801A ×2基
• - 最大推力: 32.5 kN（3310 kg）×2
• - 乗員数: 2人（試験時：1人）

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