T-37 (戦車)

T-37：ソ連初の水陸両用偵察戦車

T-37は、ソ連において世界初の水陸両用偵察戦車として開発された。1931年にイギリスから輸入した8両のヴィッカース・カーデン・ロイドA4E11水陸両用戦車が、このプロジェクトの基盤となった。ライセンス生産権を取得したことにより、ソ連は国産の水陸両用戦車の開発に着手。さらに、T-33というモデルが製作され、これは7.62mm DT機銃を搭載した小型銃塔を持ち、フォード-AAトラックの動力系を活用した。

T-33は後部にスクリューを備え、水上での航行が可能であることが特徴だった。また、フェンダーはトタン製で、その中にはバルサ材が詰められ、浮力を増すのに役立つ設計になっていた。しかし、カーデンロイド系のサスペンションは水際の泥浜での機動力に欠け、乗員配置の構造にも改善の余地が見られた。

この問題を解決するために、技師N.A.アストロフを中心に改良が行われ、T-37が誕生した。改良により、車体サイズが拡大され、足回りはフランス製のルノーAMRのボギー式サスペンションを模倣。砲塔は車体の右側へ移動され、乗員は左右に配置されることとなった。

正式に偵察戦車として採用されたT-37は、水上航行の安定性を高めるための設計変更が施され、操縦手前面の装甲板が湾曲したT-37A型も生産された。このモデルはコストパフォーマンスの高さから、1933年から1936年にかけて合計2627輌が製造された。その後、さらに改良されたT-38に移行していくこととなった。

T-37はノモンハン事件やフィンランド冬戦争、そして独ソ戦初期においても戦闘に参加した。しかし、その武装は機銃1丁に加え、装甲の厚さも最大で10mm程度（データによっては8mmまたは9mmのものも）と、対敵戦闘能力に限界があった。また、偵察車両としての性能も特に優れていたわけではなく、無線装備は小隊長車であるT-37TUのみに搭載されているため、情報伝達能力にも問題があった。

特にノモンハン事件では、河を渡って日本軍の後方に侵入することでその特性を発揮したとはいえ、機動力や防御力の不足から、実戦では課題を抱えていたことが報告されている。これらの背景から、T-37は一定の役割を果たしたものの、その性能の限界により、後続の戦車開発へとつながる重要なステップとなった。

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