TO図

TO図についての詳細

TO図（ティーオーず）またはOT図（Orbis Terrarum）は、中世西洋における特徴的な世界地図の形式です。この地図は、8世紀にスペインの修道士であるベアトゥスに関連して作成された「ベアトゥスの世界地図」にちなみ、しばしば「ベアトゥス図」とも呼ばれます。ベアトゥスの世界地図は、彼が書いた『黙示録』に対する注釈書の冒頭に存在しており、中世の地図作成における重要な位置を占めています。

歴史的背景と構造

TO図は、7世紀の学者セビリャのイシドルスが著書『語源』の中で描いた地図にその元を発しています。この図中でイシドルスは地球について「まるい」と記述していますが、その解釈には議論があります。彼が円盤状の地球を想定していたのか、それとも球状の地球を信じていたのかは定かではありません。しかし、アリストテレス以来の西洋の学者たちの間で、球体説は一般的に受け入れられていました。

TO図は、球形の地球をその上半分のみで表現するという特異なスタイルを持っています。こののスタイルは、地球の北側、すなわち人が住む温帯の地域を描くために採用されたと思われます。逆に、南半球は到達不可能または無人の地域と考えられていたため描写から省かれています。南側の幻想的な大地は「対蹠地」と呼ばれ、知識人の間ではあまり意識されていなかったのです。

地図上では「T」が大陸をアジア、ヨーロッパ、アフリカの三つに分割し、その間を地中海、ナイル川、ドン川で示しています。この「T」の外周は「O」として大洋を表現しています。また、エルサレムは通常この地図の中心に配置されており、アジアは他の二つの大陸を合成した際の大きさが示されています。太陽が東から昇るため、楽園（エデンの園）はアジアに位置して描かれることが一般的です。

表現方法と意義

TO図は、その質的かつ抽象的な表現方法によって、シンプルな形状にも関わらず非常に詳細な情報を提供することができます。初期の地図においては重要な都市はほとんど描かれず、最も重要な川や関連する地理的要素が強調されています。特に聖地に関連する四つの聖なる川は必ず記載されており、これが旅行者にとっての地図の大きな役割を示しています。

旅行者に向けての実用的な道具として、二つの地点間の町の名前を並べた旅行案内書や、港の目印を示す「ペリプルス」が存在しました。中世後期には、TO図として知られる地図の制作が進み、十字軍の時代以降は東方の都市や川も詳しく描かれるようになりました。これに伴い、新たな地理的発見や装飾的な要素も加えられ、重要な都市は特別なデザインで目立たせられました。

TO図は、中世における地理的理解と世界観を反映し、その構造や表現方法は後の地図作成へと影響を与えたと言えるでしょう。

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