TOP500

TOP500：世界最速スーパーコンピュータランキング

TOP500は、世界で最も計算速度が速いスーパーコンピュータのランキングです。狭義には、HPL（High-Performance Linpack）ベンチマークによるランキングを指しますが、広義にはGreen500やGraph500といった、電力効率やグラフ処理性能を評価するランキングも含む場合があります。このランキングは、ハイパフォーマンスコンピューティング（HPC）分野における技術進歩の指標として、広く認識されています。

様々なベンチマーク

TOP500では、複数のベンチマークが用いられています。

HPL: 最も古くから使用されているベンチマークで、密行列の演算性能を測定します。狭義のTOP500はこのHPLによるランキングを指す場合が多いです。
HPCG: HPLと同様に連立一次方程式を解くベンチマークですが、疎行列を対象とする点が異なります。密行列と疎行列は、データの格納方法が異なるため、それぞれのベンチマークで異なる性能結果が得られます。HPLとHPCGは、スーパーコンピュータの性能を異なる側面から評価する指標として、補完的な役割を果たしています。
Graph500: グラフデータ処理の性能を評価するベンチマークです。グラフデータの辺を1秒間に何回処理できるか（TEPS：Traversed Edges Per Second）で性能を測定します。近年、ビッグデータ解析の重要性が高まっているため、このベンチマークの重要性も増しています。
Green500: スーパーコンピュータの電力効率を評価するランキングです。HPLなどのベンチマーク結果を消費電力で割ることで、電力あたりの計算性能を算出します。計算速度の向上とともに、電力効率も重要な指標となっています。

歴史と背景

1990年代に入り、並列計算機が急速に増加したことで、スーパーコンピュータの性能を客観的に評価する指標が必要となりました。1992年にはプロセッサ数によるランキングが試みられましたが、実際の計算性能を反映するランキングの必要性から、マンハイム大学が性能に基づくランキング案を提案しました。テネシー大学のジャック・ドンガラ博士の貢献により、LINPACKベンチマークが採用され、1993年からTOP500プロジェクトが始まりました。当初は既存データに基づいて試行版が作られましたが、その後は設置機関とベンダーからの申告に基づいて、半年に一度、ランキングが発表されるようになりました。

TOP500リストの現状

TOP500リストは、世界中のスーパーコンピュータの性能を網羅した貴重なデータです。リストには、ベンダー、国・地域、アクセラレータ、プロセッサ、オペレーティングシステムといった様々な情報も含まれており、スーパーコンピュータ技術の動向を分析する上で非常に役立ちます。2023年6月時点のリストでは、レノボが最も多くのシステムをランクインさせており、アメリカ合衆国が最も多くのスーパーコンピュータを保有している国となっています。

リスト除外システム

いくつかのスーパーコンピュータは、TOP500リストに登録されていません。これは、速度競争への参加を拒否する姿勢を示すものや、機密保持のためなど、様々な理由があります。また、特定用途向けに設計された、汎用性の低いスーパーコンピュータも、このリストから除外される場合があります。

まとめ

TOP500は、スーパーコンピュータの性能を客観的に評価する重要な指標です。HPL、HPCG、Graph500、Green500といった様々なベンチマークを活用することで、スーパーコンピュータ技術の進歩を多角的に捉え、今後の技術開発の方向性を示唆しています。このランキングは、世界中の研究者や開発者にとって、スーパーコンピュータ技術の現状と将来を理解するための貴重な情報源となっています。

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