The Firstfruit

『The Firstfruit』 マーク デビューアルバム

『The Firstfruit』は、韓国の男性アイドルグループNCTのメンバー、マークによる初のソロアルバムである。2025年4月7日にカカオエンターテインメントからリリースされた本作は、彼がグループ活動で培ってきた経験と、独自に追求してきた音楽性が結実した「初めての収穫」とも呼べる作品である。

アルバム概要とコンセプト

マークはこれまで、NCT、NCT 127、NCT DREAMといった派生ユニットに加え、SuperMのメンバーとしても活躍してきた。グループ活動と並行して、数多くの楽曲で作詞・作曲に参加し、「Child」、「Golden Hour」、「200」といった自作曲を通じて、そのユニークかつオールラウンドな音楽的才能を発揮してきた。

本作の核となるコンセプトは、マーク自身の歩みにおいて重要な意味を持つ4つの都市――彼が生まれ育ったカナダのトロント、初めて移住したアメリカ合衆国のニューヨーク、学生時代を過ごしたカナダのバンクーバー、そしてアーティストとしての夢を現実のものとした韓国のソウル――から得たインスピレーションに基づいている。アルバムはこれら4つの都市をモチーフに、それぞれ異なるセクションで構成されており、各曲にその場所での経験や感情が込められている。

全13曲が収録されており、先行公開された「200」やイ・ヨンジをフィーチャーした「Fraktsiya」に加え、タイトル曲「1999」などが収められている。アルバムリリースに先駆け、3月19日には収録曲「+82 Pressin' (feat. HAECHAN)」が先行公開された。

収録曲に見る多様な音楽性

『The Firstfruit』には、マークの音楽的な広がりを示す多彩な楽曲が収められている。

1999: タイトル曲であるこのポップナンバーは、壮大なオーケストラとギター、金管楽器などが調和し、軽快な雰囲気を持つ。歌詞には、ソロデビューという新たな船出が自身の生まれた年である1999年を再び迎えたような感覚であること、そして世紀末に生まれた自分が世紀の終わりを飾るアーティストになるという抱負が込められている。
Fraktsiya (feat. LEE YOUNG JI): ハウス風のコード進行に重みのあるベースとシンセサイザーが印象的なヒップホップ曲で、UKドリルの要素も取り入れられている。K-POPとヒップホップの世界を行き来するマークとフィーチャリングのイ・ヨンジを「スパイ」に例えた歌詞が特徴的。
Raincouver: 穏やかな鳥の鳴き声と繊細なピアノが魅力的なポップソング。バンクーバーでの温かい記憶と共に、雨を見つめながら過去の自分を懐かしむ気持ちが歌われている。
+82 Pressin' (feat. HAECHAN): ソウルセクションの一曲であり、同じ夢を追ってきたヘチャンとの初のデュエット曲。韓国の国番号「+82」を歌詞に用い、ソウルでの活動にかける2人の自信をユーモラスに表現したヒップホップナンバー。
200: ロックサウンドを基盤としたドラムンベースジャンル。2000年代初頭のサウンドと叙情的なメロディーが融合し、速いテンポのドラムとスピーディーなラップが聴き応えがある。予想外の愛が運命になる物語が純粋に描かれている。
Mom's Interlude: マークの母親がピアノ演奏と会話で参加した特別なトラック。家族の温かい繋がりが感じられる。

その他にも、故郷を離れる感情を込めたスキットトラック「Flight to NYC」、力強いエネルギーを表現したヒップホップ「Righteous」、ミニマルなサウンドの「Loser」、90年代R&Bにインスパイアされた「Watching TV (feat. Crush)」、感性的なR&B「Journey Mercies」、そしてファンへの感謝を歌った「Too Much」など、バラエティ豊かな楽曲がアルバムを彩っている。

プロモーションとイベント

アルバムリリースに先駆け、コンセプト映像やライブクリップ、マークの内面に迫るドキュメンタリー映像など、多角的なプロモーションコンテンツが公開された。ミュージックビデオも、先行公開曲「+82 Pressin'」は映画『シン・シティ』をオマージュしたユニークな演出でソウルの情景を描き出し、タイトル曲「1999」は仮想の1999年を舞台にY2K感性を取り入れつつ、マークの多面的な魅力を映し出すストーリーテリングが展開された。

リリースを記念して、アルバム収録曲を先行して聴くプライベートリスニングパーティ「Mark's Homecoming」が開催され、アルバム制作の背景や楽曲に込めた思いが率直に語られた。また、発売日当日にはソウルでショーケース「The Firstfruit Showcase」が行われ、空港ターミナルをコンセプトにした演出でアルバムの世界観が表現された。このイベントはオンラインでも生中継され、多くのファンが視聴した。さらに、5月からは日本の名古屋、大阪、横浜でショーケースツアー「The Firstfruit SHOWCASE LIVE in JAPAN」が開催されるなど、活発な活動が展開されている。

『The Firstfruit』は、マークがこれまでの自身の軌跡を音楽として表現し、アーティストとしての新たな扉を開いた記念碑的な作品である。多岐にわたる音楽ジャンルとパーソナルな物語が融合したこのアルバムは、リスナーにマークというアーティストの現在地と、これから歩むであろう道のりへの期待を抱かせるに十分な内容となっている。

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