The Geographical Journal

The Geographical Journal

概要

『The Geographical Journal』（ザ・ジオグラフィカル・ジャーナル）は、イギリスを代表する学術団体である王立地理学会（Royal Geographical Society）が発行する、地理学に関する査読付き専門誌です。日本語では『地理学雑誌』とも呼ばれます。この雑誌は季刊として刊行されており、地理学のあらゆる分野における最新の研究成果や分析などを掲載しています。

歴史と掲載内容

『The Geographical Journal』は、その歴史を1831年にまで遡ることができる、非常に長い伝統を持つ学術雑誌です。創刊以来、地理学の進歩に寄与してきました。かつては、学術論文だけでなく、王立地理学会自身の活動に関するニュース記事なども広く掲載されていましたが、2000年を境にその編集方針が見直され、現在は主に地理学に関する学術論文、短報、そして研究の動向をまとめたレビューなどを中心に収録しています。しかしながら、学会の重要な記録である年次総会の議事録や、その年の会長による演説については、創刊当時からの伝統として、毎年9月号に欠かさず掲載され続けています。
2001年以降は、国際的な学術出版社の最大手の一つであるWiley-Blackwellと共同で発行されており、より広い読者層へのアクセスが可能となっています。

学術界における評価

『The Geographical Journal』は、イギリスで最も長い歴史を持つ地理学の学会誌の一つとして、その権威を確立しています。しかしながら、学術論文の引用動向を見ると、掲載された論文が他の多くの地理学雑誌から引用されるというよりも、むしろ『The Geographical Journal』自身の過去の論文を引用する傾向が比較的強く見られます。この傾向は、他の有力な地理学雑誌との間で、引用を通じた学術的な相互作用が限定的である可能性を示唆しており、ある種の「孤立」と評されることもあります。
イギリス国内の地理学者にとって、『The Geographical Journal』は学術的な情報を得る上で重要な雑誌の一つであり、引用頻度で見ると6番目に位置づけられています。しかし、自身の最も重要と考える研究成果については、同分野の別の有力誌である『Transactions of the Institute of British Geographers』などへ投稿する傾向が見られることも指摘されています。
一方、この雑誌はイギリス国内に留まらず、広く国際的な認知を得ており、例えばアメリカ合衆国の地理学者たちの間でもよく知られています。

日本からの視点

日本においても、『The Geographical Journal』は注目されてきました。特に、著名な地理学者である辻村太郎は、1954年の論考の中で、この雑誌の編集姿勢とその発行元である王立地理学会の活動に強い賛辞を送っています。辻村は、この雑誌が一貫して守り続けている控えめながらも堅実な編集方針、そして表紙の色を長年変えないという「頑固」とも取れる姿勢の背後には、他の追随を許さない揺るぎない自信が見て取れると述べています。さらに、エヴェレスト登山や南極探検といった大規模な探査活動への後援を惜しまない、王立地理学会の組織力についても、学ぶべき点が多いと称賛しています。

『The Geographical Journal』は、その長い歴史を通じて地理学の発展に貢献し続けている、国内外で認知された学術雑誌です。独自の編集方針や引用傾向といった特徴を持ちながらも、地理学の多様な研究成果を発信する重要な媒体であり続けています。

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