Tivoli

Tivoli（チボリ）

Tivoliは、大手テクノロジー企業であるIBMが展開する、システム管理に特化したソフトウェア製品群のブランド名です。その起源は、かつて独立した企業であった「チボリシステムズ（Tivoli Systems）」に遡ります。同社はシステム管理ソフトウェアの開発・販売を手がけており、特にTME10（Tivoli Management Environment 10）シリーズを中心とした製品を提供していました。TME10の特徴は、オブジェクト指向の基盤であるTivoli Management Framework（TMF）上で動作することで、多様なオペレーティングシステムが混在する環境でも、各プラットフォームへの依存度を抑えた効率的なシステム管理を実現できる点にありました。

IBMは、システム管理分野の強化を図るため、1996年3月にチボリシステムズ社を買収し、自社のソフトウェア事業部門に統合しました。この買収により、IBMが従来から展開していたNetViewやSystemView、バックアップ製品のADSM（後にTivoli Storage Managerとなる）といったシステム管理製品は、チボリシステムズの製品群と統合され、「Tivoli Software」という新たなブランドのもとに再編されました。このブランド統合は、IBMのシステム管理ソリューションを一本化し、顧客に対してより包括的な選択肢を提供するものでした。

IBMはその後も、Tivoliブランドの製品ラインナップを拡充するために戦略的な企業買収を続けました。2004年には監視ソフトウェアのOMEGAMONシリーズを持つCandle Corporationを、2005年には大規模ネットワーク監視に強いNetCoolシリーズを提供していたMicromuse社を、そして2006年には資産管理ソフトウェアのMaximoシリーズで知られるMRO Software社を買収しました。これらの買収によって得られた技術や製品は、Tivoliブランドのポートフォリオに統合され、そのカバーするシステム管理領域は一層広範なものとなりました。

Tivoli製品群は、非常に幅広いシステム管理のニーズに対応しています。具体的な製品分野としては、システムやネットワークからの通知や警告を一元的に管理するメッセージ管理（例：Netcool/OMNIbus）、ネットワーク機器の状態やトラフィックを監視するネットワーク監視（例：Tivoli NetView）、サーバー上のプロセスやリソース使用状況を監視するシステム監視（例：Tivoli Monitoring - ITM）、ビジネスサービス視点でのITシステムの健全性を管理するサービスレベル管理（例：Tivoli Business Service Manager）、システムの構成情報を管理する構成管理（例：Tivoli Configuration Manager）、データのバックアップとリカバリを行うストレージ管理（例：Tivoli Storage Manager - TSM）、定型的な業務処理を自動化するジョブ管理（旧称Tivoli Workload Scheduler - TWS、現在はIBM Workload Schedulerとして展開）、ユーザーのアクセス権限などを管理するユーザー管理・セキュリティ（例：Tivoli Identity Manager、Tivoli Access Manager）、IT資産のライフサイクルを管理する資産管理（例：Maximo）など多岐にわたります。

Tivoli製品は、特に大企業、中でも高い信頼性が求められる金融業界などで広く採用されています。その強みは、多数の製品を組み合わせ、顧客固有の環境に合わせて細かくカスタマイズすることで、大規模かつ複雑なシステム環境でも高度に統合された管理基盤を構築できる点にあります。しかしながら、この柔軟性と多機能性は、効果的に使いこなすためには各製品に関する深い知識や、導入・運用・保守における専門的なスキルが必要となるという側面も持ち合わせており、導入や運用にはある程度のハードルがあると言われることもあります。

インフラアーキテクチャの面では、チボリシステムズが開発した製品の多く（旧TME10系列の製品など）は、Tivoli Management Framework (TMF)という共通基盤の上で動作する設計になっており、これがマルチプラットフォーム対応の容易さにつながっていました。ただし、このFramework自体の管理や、それに伴うシステム負荷も考慮する必要があります。一方、IBMが元々開発していた製品（NetViewやTSMなど）や、後に買収した製品の一部（ITMのV6以降は旧OMEGAMONアーキテクチャに基づいている）は、必ずしもTMFを必要とせず、それぞれの製品固有のアーキテクチャに基づいています。

「Tivoli」という名称については、「I LOV IT」を逆から読んだものであるという説が流布することがありますが、これは事実ではありません。実際には、開発時の暫定的な名称がそのまま定着したものとされています。

IBMはTivoli関連製品について、かつては「IBM Pulse」という年次カンファレンスを主催し、顧客やパートナーとの交流や情報共有の場としていました。これらの取り組みを通じて、Tivoliは長年にわたり企業ITシステムの安定稼働と効率的な管理を支える基盤として重要な役割を担ってきました。

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