Tu-98 (航空機)

Tu-98（ツポレフ98）：ソ連の試作戦略爆撃機

概要

Tu-98は、ソ連のツポレフ設計局によって開発された戦略爆撃機であり、初の超音速機として知られています。また、NATOコードネームで「バックフィン」とも呼ばれています。この機体は、1952年に開発が始まり、1955年に初飛行を果たしましたが、実戦には配備されることはありませんでした。最終的にはわずかに2機しか製造されませんでした。

この戦略爆撃機の主な目的は、当時のTu-16ジェット爆撃機を代替するための機体として設計されていました。Tu-98は、リューリカ製のAL-7ターボジェットエンジンを2基搭載しており、これにより超音速飛行が可能となりました。また、最大で約3トンの熱核爆弾を搭載できる能力も備えていました。製造された2機のうち1機は飛行テストに使用され、貴重なデータが収集されました。当時は超音速飛行機の性能や特性についての理解が十分ではなく、Tu-98の飛行試験から得られた情報は極めて貴重なものでした。

しかし、不運にもその試験機は着陸時の事故で失われてしまいました。

西側からの評価

Tu-98は1956年、モスクワ郊外で開催された航空ショーに参加し、この中で西側の関係者の前に姿を現しました。彼らはTu-98を「ソ連の新型爆撃機」と勘違いし、その後もこの機体についての推測が広がっていきました。 航空ショーでは他の試作戦闘機2機と連携してフライパスを行い、西側の目を引くこととなりました。

大きな関心を集めたものの、実際にはこの機体は試作機であり、実戦には投入されていませんでした。事故で失った後も、Tu-98は「謎の爆撃機」として語られ続け、まるでヤコブレフ設計局のYak-42という機体だったのではないかとの噂や、量産体制が整っているのではという誤解が生じていきました。このような流言は、Tu-98の形状が似ているTu-22などの爆撃機が試験に供されていたことも影響し、さらなる信憑性を与えることとなりました。実際にTu-98が試作機であることが西側に知られるようになったのは1960年になってからでした。

スペック

• - 全長: 32.06m
• - 全幅: 17.27m
• - 全高: 8.06m
• - 最大離陸重量: 39,000kg
• - 最大速度: 1,365km/h
• - 乗員: 3名

Tu-98は、ソ連が航空機工学の卓越した技術を誇示するために開発した試作機であり、航空機の設計と性能に関する貴重なデータを提供しました。今後の研究や開発に影響を与えた機体として、その存在は航空史において重要な位置を占めています。

参考文献

• - 『世界の傑作機 No.113 Tu-22/22M“ブラインダー”“バックファイア”』 文林堂、2005年 ISBN 4-89319-131-4
• - エフィーム・ゴードン、ビル・スウィートマン 共著、桂令夫 翻訳、松代守弘 監修 『ソビエトXプレーン』 光栄、2001年 ISBN 4-87719-854-7

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