Twelve Y. O.

トゥエルブ・ワイ・オー：沖縄に潜む巨大な陰謀

福井晴敏のデビュー作にして、第44回江戸川乱歩賞を受賞した『Twelve Y.O.』（トゥエルブ・ワイ・オー）は、1998年9月10日に講談社より単行本として出版されました。沖縄を舞台に繰り広げられる壮大なサスペンス・スペクタクル・アクションは、著者の代表作『亡国のイージス』や『戦国自衛隊1549』へと続く物語の重要な基盤となっています。

物語は、米海兵隊の撤退という衝撃的な出来事を起点として展開します。その裏には、「アポトーシスII」というコンピューターウイルスと「ウルマ」と呼ばれる兵器を用いる謎のテロリスト集団「12（トゥエルブ）」の存在が隠されていました。

主人公は、かつてヘリコプターパイロットとして活躍していたものの、事故によるトラウマでパイロットを断念した陸上自衛官の平貫太郎です。自衛隊地方連絡部で募集員として勤務する彼は、ある日、かつての恩人である東馬修一と再会します。この出会いをきっかけに、平は巨大な陰謀に巻き込まれていきます。

平は、防衛庁情報局（DAIS）の局員である夏生由梨や辻井護らと協力しながら、テロリスト集団「12」の目的や正体を探ります。「12」のリーダー格である東馬理沙は、東馬修一の娘であり、高い戦闘能力を持つ謎めいた少女です。その正体は「ウルマ」と呼ばれ、物語のカギを握る存在となっています。

物語には、DAIS内部の権力闘争や、アメリカ国家安全保障局（NSA）といった国際的な陰謀も絡み合っています。DAISにおける国外事案を担当する古武正巳と、国内事案を担当する井島一友は、対立関係にあり、それぞれの思惑が複雑に絡み合っています。

平は、自身のトラウマと戦いながら、テロリスト集団「12」の陰謀を阻止しようと奮闘します。物語は、沖縄の美しい自然と、陰謀の渦巻く緊迫した状況が対比的に描かれ、読者を最後まで引き込む展開となっています。

この作品は、単なるサスペンスアクションにとどまらず、自衛隊内部の組織構造や情報戦、そして国際政治といった複雑な要素を巧みに織り交ぜています。また、前作『川の深さは』で描かれた防衛庁情報局の再編や、コンピューターウイルス「アポトーシス」の進化なども重要な要素として物語に影響を与えています。

登場人物たちの過去や人間関係も丁寧に描かれており、それぞれのキャラクターの背景や動機が、物語全体の深みとリアリティを高めています。特に、平貫太郎と東馬修一、そして東馬理沙の関係性は、物語の中心となる重要な要素です。

『Twelve Y.O.』は、福井晴敏の作家としての才能を世に知らしめた作品であり、後の数々の傑作へと繋がる重要な作品として高い評価を得ています。その後の作品群においても、本作で描かれた要素や登場人物が重要な役割を果たしており、シリーズ作品全体を通して楽しめる作品となっています。中国語版『代号12』も存在するなど、国際的な評価も高く、日本の軍事小説史においても重要な位置を占める作品と言えるでしょう。

本作を読み終えた後には、続編である『亡国のイージス』や、他の関連作品へと続く物語の壮大さに触れることができるでしょう。福井晴敏の世界観を深く理解したい読者にとって、必読の一冊と言えるでしょう。

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