U91 (潜水艦・2代)

U-91の概要と誕生

U-91は、第二次世界大戦中にナチス・ドイツ海軍が運用したVII C型潜水艦の一隻です。この潜水艦は、リューベックに位置するフレンダー造船所にて建造番号295として建造が進められ、1941年11月30日に進水しました。その後、訓練を経て1942年1月28日に正式に就役し、最初の艦長にはハインツ・ヴァルカーリング中尉が着任しました。作戦遂行能力を高めるための訓練期間を第5潜水隊群で過ごした後、1942年9月1日からは実戦部隊である第9潜水隊群に配属され、その短いながらも濃密な作戦歴を開始しました。

U-91は比較的戦果を上げたUボートとして記録されており、約14ヶ月の活動期間中に合計6回の哨戒任務に従事し、連合国側の船舶を総計26,000トン以上撃沈しました。また、ドイツ海軍の重要な戦術であったウルフパック（群狼作戦）には、その運用期間中に15回も参加しています。1943年4月20日には、艦長がハインツ・フンガースハウゼン中尉に交代しています。

波乱の哨戒任務

第1哨戒：初出撃と最初の戦果

U-91の最初の哨戒は、1942年8月14日にキールを出港することから始まりました。大西洋を目指し、アイスランドとフェロー諸島の間にある「ギャップ」を越える航路をとりました。この航海の最中、9月1日にはPBYカタリナ飛行艇からの攻撃に遭遇しますが、これは当初別の潜水艦に対するものと誤認されていたようです。さらに9月12日には、ON127船団を護衛する艦船から砲撃を受け、小規模な損傷を負いました。しかし、この哨戒で最大の戦果を上げたのは9月14日です。この日、U-91はカナダ海軍の駆逐艦オタワを発見。深夜2時5分に魚雷2本を発射し、命中を確認しました。さらに2時15分には損傷したオタワと再び遭遇しますが、これを別の艦船と間違え、とどめとなる3本目の魚雷を発射しました。これによりオタワは沈没し、乗員181名のうち114名が命を落としました。9月26日には、グリーンランド南東のファーベル岬沖で商船ニューヨークを撃沈するなど、成果を上げました。この哨戒を終えたU-91は、フランス大西洋岸のブレスト港に帰還しました。

第2哨戒：静かな航海

1942年11月1日にブレストを出港したU-91は、2回目の哨戒を開始しました。この任務は12月26日に終了しましたが、特筆すべき交戦や出来事は記録されていません。

第3哨戒：激戦と犠牲

3回目の哨戒では、U-91は厳しい状況に直面しました。航空機からの爆弾と水上艦艇からの爆雷による猛烈な攻撃に晒され、損傷を避けるため1943年2月21日には一時的に攻撃を中断し、修理を余儀なくされました。しかし、間もなく作戦に復帰し、3月17日にはHX229船団を襲撃しました。この攻撃で、アメリカの商船ハリー・ルッケンバックとイレーヌ・デュポン、そしてイギリスの商船ナリバが被害を受けました。特にルッケンバックには、3時37分から3時41分の間に発射された5本の魚雷のうち2本が命中し、わずか3分で沈没しました。乗員80名のうち71名が救命ボートに避難しましたが、彼らが最終的に救助されたかについては不明です。ナリバとデュポンは、この日既に別のUボート（U-600）によって損傷を受けていましたが、U-91は5時56分にデュポンに魚雷2本を命中させ沈没させました。また、3本目の魚雷がナリバに命中し、損傷を与えました。帰路についたU-91は、3月27日にビスケー湾西部でイギリス空軍のリー・ライト装備ウェリントン爆撃機による攻撃を受けました。幸い艦に損傷はありませんでしたが、この時甲板にいた乗員3名が緊急潜航の際に波間に取り残されました。2名は後に救助されましたが、残る1名は発見されず、犠牲となりました。U-91は3月29日にフランスへ帰還しましたが、通常の母港であるブレストではなく、ロリアン港に入港しました。

第4哨戒：再び静寂

1943年4月29日に開始された4回目の哨戒は、大きな出来事もなく平穏に過ぎ、6月7日にブレストへ帰港しました。

第5哨戒：補給作戦中の危機

1943年10月26日、U-91はカナダ空軍第10飛行隊のB-24リベレーターからの攻撃を受けましたが、損傷はありませんでした。この頃、U-91は僚艦U-584との洋上での燃料補給を予定しており、互いを捜索していました。数日後の10月31日、U-584を発見し補給作業を開始しましたが、この時、アメリカ海軍の護衛空母カードの艦載機によって両艦は発見されてしまいました。混乱の中、U-91は潜航に成功し、損傷を受けることなくその場から脱出することができましたが、U-584は敵機の攻撃により沈没するという悲劇的な結末を迎えました。

最後の哨戒と喪失

U-91にとって最後の哨戒となったのは、1944年1月25日にブレストを出港した後の任務でした。約1ヶ月の航海の末、1944年2月26日、U-91は北大西洋の中央部において、イギリス海軍のフリゲート艦隊（アフレック、ゴア、グールド）による執拗な爆雷攻撃を受けました。度重なる爆雷の衝撃により、U-91は海底へと沈んでいきました。

この沈没により、艦長のハインツ・フンガースハウゼン中尉を含む36名の乗組員がU-91と運命を共にしました。乗員のうち、生還できたのは16名でした。比較的成功したUボートであったU-91の短い戦歴は、この悲劇的な最期をもって幕を閉じました。

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