UARS

UARS（上層大気観測衛星）

UARS（Upper Atmosphere Research Satellite）は、アメリカが打ち上げた科学衛星で、主に地球の上層大気、特にオゾン層を観測するために設計されました。その主要な目的は、地球の大気の状態や成分を調査し、環境問題や気候変動に対する理解を深めることです。

概要

UARSは1991年9月12日に、スペースシャトル「ディスカバリー」から打ち上げられました。それから2005年12月まで運用され、その後は軌道上に停留していました。2010年には国際宇宙ステーションによってデブリ回避マヌーバが行われ、最終的には2011年9月24日に大気圏への再突入を果たしました。この際、多くの部品は燃え尽きましたが、26個の破片が残る可能性があると予測されていました。

観測機器

UARSには10種類の観測機器が搭載されており、これにより多様なデータを取得しました。主な機器は以下の通りです。

• - SOLSTICE（太陽放射測定用分光計）：太陽のスペクトル放射照度を測定。
• - SUSIM（太陽紫外放射測定用分光計）：太陽フラックスの変動を分析。
• - PEM（高エネルギー電子・陽子測定装置）：宇宙の粒子を測定。
• - CLAES（大気測定用地球周縁赤外分光計）：大気中の気体成分と温度の全体的な観測を行う。
• - ISAMS（大気測定用改良型機械的冷却式赤外サウンダー）：気温や大気成分の濃度を測る。
• - MLS（大気測定用マイクロ波リムサウンダー）：オゾンや酸素の分布、風の測定、気圧の推定を行う。
• - HALOE（ハロゲン観測用太陽掩蔽式分光計）：成層圏の気体の濃度を測定。
• - HRDI（風測定用走査型ファブリ・ペロー干渉計）：中間圏での風の測定。
• - WINDII（風測定用走査型マイケルソン干渉計）：上層大気の風を観測。
• - ACRIM-II（太陽常数測定用広帯域放射計）：全太陽放射照度を測定。

運用の経過

UARSの運用にはいくつかのトラブルがありました。1992年にISAMSが故障し、その後も様々な機器が次々と運用停止に追い込まれました。特に、2001年には強制的に運用が停止され、その後2005年まで観測業務が再開されることはありませんでした。最終的には、2005年12月に運用を終了し、約350×500kmの高度にまで軌道を下げました。

大気圏再突入

2011年9月24日、UARSは無制御の状態で大気圏に突入しました。宇宙機の落下地点は、北緯57度から南緯57度の範囲に広がった可能性があり、具体的には太平洋上での落下が確認されました。幸いにも、この突入による被害や目撃証言は報告されていません。

UARSの任務と観測は、地球環境についての理解を深める上で重要な役割を果たしました。彼のデータは、地球の大気における変化を追跡するための基礎となり、未来の環境問題に対処するための貴重な資源となっています。よって、UARSは科学の進歩と環境保護に寄与した重要な衛星として記憶されることでしょう。

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