ULTRA BLUE

宇多田ヒカル『ULTRA BLUE』

『ULTRA BLUE』（ウルトラ・ブルー）は、2006年6月14日にリリースされた宇多田ヒカルの4枚目のオリジナルアルバムです。前作『DEEP RIVER』から約4年ぶり、Utada名義の『Exodus』からは約2年ぶりの作品となります。本作では、ほぼ全ての楽曲の作詞・作曲・編曲を宇多田自身が手掛けており、よりパーソナルな表現を追求しています。

アルバムの背景

2002年に3rdアルバム『DEEP RIVER』をリリース後、宇多田ヒカルは海外レーベルとの契約を経て、Utada名義での活動を開始しました。その間、日本国内では武道館ツアーの開催や、映画主題歌のリリース、初のシングルコレクションの発表など、精力的に活動を続けていました。

Utada名義でのアルバム制作を通して、宇多田は自身でアレンジを行うなど、音楽的な実験を重ねていきました。その結果、「音でやりたいことが試せた」と語り、よりシンプルで洗練された音作りを志向するようになったと言います。

構成とテーマ

アルバムタイトル『ULTRA BLUE』は、制作を進める中で宇多田自身が「今の自分に合う」と感じた「青色」からインスパイアされています。過去の作品でも「青い空」を歌詞に用いることが多かった宇多田ですが、本作ではその「青」に対する意識がより深掘りされています。自身の中にある「青」への恐怖心と向き合い、それをコントロールすることで、「青」を征服、支配したいという思いが込められています。

また、本作では「自分が女の子であることに対する違和感」や、中性的な自己認識についても表現されています。男でも女でもない、大人でも子供でもない、そんな「真ん中」の地点に安らぎを感じるという宇多田の感覚が、楽曲全体に反映されています。

収録曲の歌詞にも、様々なテーマが込められています。「This Is Love」では、相反する感情の狭間にある複雑な感情の定義を試み、「日曜の朝」では、日常の中にある特別さ、普通であることの尊さを表現しています。「海路」と「COLORS」は、アルバム全体のキーワードとなる楽曲であり、作品がリスナーに委ねられた後の解釈の多様性を示唆しています。

制作と録音

アルバム収録曲の中で最初に制作されたのは「COLORS」で、新婚旅行中に購入したキーボードで作られました。その後、「誰かの願いが叶うころ」や「Passion」など、意欲的な楽曲制作が続きました。

2005年に日本での活動を再開してからは、「Be My Last」を皮切りにアルバム制作を本格化させました。同曲は「電源の入っていないエレキギター」で作曲されるという新たな試みがなされています。また、「Keep Tryin'」の制作を通して、「気持ちが上がる曲」「開いた感じの曲」を追求するようになりました。

アルバム制作の最終段階では、「海路」が完成しました。当時の政局を反映して「総裁選挙」という仮タイトルが付けられていたというエピソードも残っています。

音楽性

『ULTRA BLUE』は、前作に比べてシンセサウンドを強調したアレンジが特徴的です。宇多田自身の打ち込みによる様々な音色が、楽曲に深みと奥行きを与えています。一方で、「誰かの願いが叶うころ」や「Be My Last」など、生楽器を主体としたシンプルなアレンジの楽曲も収録されており、バラエティ豊かな構成となっています。

メロディは全体的に強い主旋律が特徴で、高音を多用した歌唱も多く見られます。「This Is Love」や「BLUE」では、サビで印象的なメロディが展開され、楽曲に切迫感を与えています。また、転調や複雑なコード進行も多く用いられており、音楽的な実験性も感じられます。

評価とチャート成績

『ULTRA BLUE』は、音楽評論家から高い評価を受けました。その独創性、音楽的な完成度、そして宇多田自身のパーソナルな表現が評価されています。

アルバムは初週に約50万枚を売り上げ、オリコン初登場1位を獲得しました。デビューアルバムから5作連続での初動50万枚突破は、史上初の快挙となりました。年間ランキングでも7位を記録し、2006年で最も売れた女性アーティストのオリジナルアルバムとなっています。デジタルダウンロードでも成功を収め、iTunes年間ランキングで4位を獲得しました。また、日本レコード協会によってミリオン認定を受けています。

収録曲

1. This Is Love
2. Keep Tryin'
3. BLUE
4. 日曜の朝
5. Making Love
6. 誰かの願いが叶うころ
7. COLORS
8. One Night Magic feat. Yamada Masashi
9. 海路
10. WINGS
11. Be My Last
12. Eclipse (Interlude)
13. Passion

『ULTRA BLUE』は、宇多田ヒカルが自身の音楽性を深く掘り下げ、新たな表現に挑戦した意欲作です。彼女のパーソナルな思いが込められた歌詞、実験的なサウンド、そして卓越した歌唱力は、聴く人の心を捉えて離しません。

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