USNS

USNS（ユナイテッド・ステイツ・ネイバル・シップ）

USNS（United States Naval Ship）とは、アメリカ合衆国海軍が保有する艦船のうち、特定のカテゴリーに属するものに付与される公式な接頭辞です。この名称は、特にアメリカ海軍の主要な組織の一つであるアメリカ海軍海上輸送司令部（MSC; Military Sealift Command）によって管理・運用される艦船群に対して使用されます。

アメリカ海軍海上輸送司令部は、軍事作戦や人道支援活動など、世界中で展開されるアメリカ軍の活動を支えるための、海上における輸送、補給、および関連する兵站サービスを専門的に提供する組織です。USNSという名称を冠する艦船は、この海上輸送司令部の任務遂行において中心的な役割を果たしており、戦闘艦艇を直接補完する様々な種類の補助艦艇が含まれます。

具体的には、USNSが付与される艦船には、洋上での燃料や物資の補給を担う高速戦闘支援艦、大規模災害時や紛争地域における医療支援を提供する病院船、そして戦略的な要衝に事前に物資を搭載して待機する事前集積船などがあります。これらの艦船は、戦闘行為を主任務とするものではなく、主に兵站、支援、輸送といった後方任務に従事します。

USNSの最も特徴的な点は、その運用形態にあります。これらの艦船は現役でありながらも、「就役（commissioned）」状態にはありません。通常の戦闘艦艇が海軍軍人によって「就役」し、軍事的な指揮系統と法的なステータスの下に置かれるのとは異なり、USNSは法的には非就役の状態にあります。

そして、もう一つの重要な特徴は、これらの艦船がアメリカ海軍に雇用された文民、すなわち民間人によって運用されているという点です。通常の海軍軍人が乗組む艦船とは異なり、USNSには船長、航海士、機関士といった主要な船務を担う人員として、アメリカ合衆国政府によって直接雇用された文民船員が乗り組みます。これにより、海軍は限られた正規軍人のリソースを、より直接的な戦闘任務に従事する艦船に集中させることが可能となります。また、文民船員の専門的なスキルや効率的な運用手法を活用するという側面もあります。

これに対して、現役のアメリカ海軍軍人が乗り組み、正式に「就役（commissioned）」している軍艦には、USS（United States Ship）という接頭辞が付与されます。空母、巡洋艦、駆逐艦、潜水艦といった主要な戦闘艦艇は、このUSSという名称を冠しています。USSとUSNSは、ともにアメリカ海軍の構成要素ではありますが、そのステータス（就役/非就役）と運用人員（軍人/民間人）において明確に区別されており、それぞれが担う役割や法的な位置づけも異なります。

要約すると、USNSはアメリカ海軍海上輸送司令部所属の補助艦艇であり、現役ではあるものの就役しておらず、海軍に雇用された文民船員によって運用される艦船に付けられる名称です。これは、正規の海軍軍人が乗組む就役艦に付与されるUSSとは対照的な存在であり、アメリカ海軍がその任務を遂行する上で不可欠な後方支援機能を提供するための、独特かつ効率的な運用形態を象徴しています。USNSの存在は、現代海軍における兵站と支援の重要性、そして多様な人員構成の活用を示す事例と言えます。

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