UTNジョッキー ミュージック・イン・ナラ

UTNジョッキー ミュージック・イン・ナラ

番組概要

『UTNジョッキー ミュージック・イン・ナラ』は、1973年4月に放送を開始した奈良テレビ放送の音楽番組です。同局が開局を迎えた時期に、月曜日から土曜日の夕方6時台に生放送で届けられました。翌1974年3月まで、約1年間にわたって放送されました。

開局期の奈良テレビと番組の誕生

奈良テレビ放送は、1973年春に放送を開始したばかりの新しい局でした。当時の放送時間は現在と比べて非常に限られており、通常は夕方から夜にかけての時間帯にのみ放送が行われていました。日中に学校向けの教育番組が一部放送される日もありましたが、それ以外の時間はほとんど放送休止の状態でした。こうした状況下で、『UTNジョッキー ミュージック・イン・ナラ』は、教育番組やローカルニュースといった必須の番組を除けば、数少ない自社制作による番組の一つとして企画されました。

番組制作の背景と目的

この番組の誕生には、奈良テレビ開局という大きな出来事に伴う特別な事情がありました。開局当初からアナウンサーとして携わっていた岡山正博氏の証言によれば、当時の奈良テレビには、テレビ番組制作の経験を持つスタッフがまだ少なかったといいます。多くの関係者が、放送業界における実務経験に乏しい状況でした。そのため、『UTNジョッキー ミュージック・イン・ナラ』は、単に視聴者に音楽を届けるという目的だけでなく、番組制作に携わるディレクターやカメラマンといった技術スタッフが、実際の生放送を通じてテレビ番組作りの流れや技術に慣れるための「訓練の場」としての側面も強く持っていました。言わば、スタッフのスキルアップを図るための実践的なプログラムとして位置づけられていたのです。

番組の内容と独特のスタイル

番組の基本的な構成は、スタジオにいるアナウンサーがトークを挟みながら、様々なジャンルの音楽を流すというシンプルなものでした。しかし、スタッフの習熟度がまだ十分でなかったことを反映して、音楽が流れている間の映像表現には独特の特徴がありました。具体的には、演奏されている楽曲のレコード盤のジャケット写真を画面に映し出す、というスタイルがとられていました。これは、複雑な映像演出やカメラワークを必要としない方法であり、制作スタッフが基本的な送出作業に集中できるよう配慮された結果であったと考えられます。アナウンサーの語りと、ジャケット写真という静止画を背景にした音楽という、飾り気のないスタイルが、番組の特色となっていました。

初のスタジオ制作番組としての意義

『UTNジョッキー ミュージック・イン・ナラ』は、奈良テレビ放送が開局して初めて、自局のスタジオで制作された番組でした。これは、外部の制作会社に委託することなく、あるいは中継など特殊な形式ではなく、局内の設備と人材を使って番組を作り上げるという、奈良テレビにとって大きな一歩を示すものでした。スタッフ育成という目的を兼ね備えつつも、自らの手で番組を生み出す挑戦の始まりであり、開局間もないローカル局が試行錯誤を重ねながら放送事業を軌道に乗せようとしていた時代の息吹を感じさせる番組と言えるでしょう。短い放送期間ではありましたが、奈良テレビの歴史における重要な初期の番組として記憶されています。

もう一度検索