VALUESTAR

VALUESTAR：NECが築き上げたデスクトップPCブランドの歴史

NEC(日本電気)は、かつてVALUESTARというブランド名でデスクトップパソコンを展開していました。その企画、開発、製造はNECパーソナルコンピュータが行い、長年に渡り日本のパソコン市場において重要な役割を担いました。本稿では、VALUESTARの歴史、製品の特徴、市場における位置付け、そしてLaVieブランドへの統合までを詳細に解説します。

PC-9821シリーズからの始まり：98MATE ValueStar

VALUESTARの起源は、PC-9821シリーズの個人・家庭・スモールオフィス向けモデル「98MATE ValueStar」に遡ります。1995年、Windows 95日本語版の登場を機に発売開始されました。この製品は、当時市場で成功を収めていた富士通のFMVに対抗するべく、Officeソフトをはじめとする多数のアプリケーションをプリインストールした点が大きな特徴でした。

PC-9821シリーズの主力機種である98MATE(PC-9821Xシリーズ)をベースにしながらも、価格を抑えるためにグラフィックチップや拡張スロット数を制限するなど、機能面での差異化を図っていました。当時、個人・家庭向けには98MULTi CanBe(PC-9821Cシリーズ)も存在しており、高機能なマルチメディアPCとしてValueStarとは明確に区別されていました。

当初はニッチな製品でしたが、そのコンセプトは広く受け入れられ、やがてPC-9821デスクトップ機の主力製品へと成長しました。後期には98MULTiの機能も取り入れ、マルチメディア機能も強化。タワー型製品も登場し、初期に見られた機能制限も緩和されていきました。しかし、1997年にPC98-NXシリーズが登場すると、ラインナップの整理が進み、PC-9821V233を最後にPC-9821シリーズのValueStarは歴史の幕を閉じました。

PC/AT互換機|PC_AT互換機への移行：VALUESTAR-NX

PC98-NXシリーズの登場と同時に、VALUESTARはPC/AT互換機|PC_AT互換機へと移行しました。VALUESTAR-NXと名付けられたこのシリーズは、当初のロードマップでは発売が予定されていなかったCanbe NX(TVチューナー内蔵)やCEREB NX(マルチメディア対応)といった機種も包含することとなりました。

NECの国内向けデスクトップパソコンは、VALUESTARブランドに統一され、タワー型と横置きデスクトップ型が製造されましたが、後にデスクトップ型は廃止されました。多くの機種がオリジナル筐体を採用していましたが、RシリーズやUシリーズなどATX規格を採用した機種も存在しました。

1998年に登場したVALUESTAR NX（PC-VC型とPC-VE型）は、「縦置きのミニタワー型」（正確にはマイクロタワー型）というスタイルを確立し、そのスリムなデザインが注目を集めました。その後、モデルの違いを表すため、NXの代わりにCやTといったアルファベットが追加されるようになりました。2004年夏モデルまでのLシリーズには、マイクロタワー型のVALUESTAR NXのデザインが受け継がれていましたが、LシリーズがTシリーズを吸収しデザインが大きく変更されたため、その面影は消え去ってしまいました。

近年では、3D映像に対応した機種や、デジタルTVチューナー搭載機が登場し、リモコンによる操作でテレビやDVDと同様にストリーミング放送を視聴できるモデルも存在しました。

LaVieブランドへの統合

2015年春モデルより、それまでノートパソコンブランドとして親しまれてきたLaVieが、デスクトップ型を含むすべての個人向けパソコンのブランド名として再定義されました。それに伴い、長年に渡り親しまれてきたVALUESTARブランドはLaVieに統合され、20年の歴史に幕を閉じました。VALUESTAR S、VALUESTAR NはLaVie Desk All-in-oneに、VALUESTAR LはLaVie Desk Towerへとそれぞれブランド名・シリーズ名が変更されて販売されました。

まとめ

VALUESTARは、PC-9821シリーズからPC/AT互換機|PC_AT互換機へと時代に合わせて進化を遂げ、日本のパソコン市場において重要な役割を果たしたブランドでした。そのシンプルながら洗練されたデザイン、そして多様なラインナップは多くのユーザーから支持され、日本のパソコン史にその名を刻みました。LaVieブランドへの統合は時代の流れではありましたが、VALUESTARの歴史は、NECパーソナルコンピュータ、ひいては日本のパソコン業界の歴史における重要な一ページとして記憶されています。

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