VANILLA (アルバム)

河村隆一の3作目オリジナルアルバム『VANILLA』：飽くなき創作意欲と社会への眼差し

2004年4月7日、コロムビアミュージックエンタテインメントから発売された河村隆一の3枚目のオリジナルアルバム『VANILLA』は、彼の音楽キャリアにおいて重要な転換点となる作品です。コロムビア移籍後第一弾アルバムという位置づけに加え、それまでの活動とは異なる側面が強く打ち出されています。

バンドサウンドを前面に押し出した力強い楽曲群

本作の特徴としてまず挙げられるのは、バンドサウンドを前面に押し出したサウンドプロダクションです。先行シングル『SPOON/Missing you|SPOON_Missing you』と同様に、より生々しく、力強い演奏が楽曲全体を彩っています。葉山拓亮氏（LUNA SEAのINORAN氏とのユニットTourbillonのメンバー）が多数の楽曲で編曲を担当しており、彼の音楽性もアルバム全体のサウンドに大きく貢献しています。

「まだ食い足りない」という創作意欲の表れ

アルバムタイトル『VANILLA』は、河村隆一自身の「まだ食い足りない…もうちょっと食いたい」という、飽くなき創作意欲を表す言葉から名付けられました。インタビューでは、この言葉には更なる表現の場を求める彼の強い意志が込められていることが伺えます。実際、翌年にはTourbillonとしての活動を開始しており、このアルバムが彼の音楽人生における新たな出発点であったと言えるでしょう。

社会へのメッセージと内省的な心情

34歳を迎えた河村隆一は、当時のインタビューで「そろそろ社会的なことも歌えないと…」と語っており、本作には社会へのメッセージが込められた楽曲も複数収録されています。特に2曲目『覚醒』は、当時の小泉純一郎政権へのアンチテーゼとも取れる内容となっており、政治体制や日本の現状への彼の鋭い視点を示しています。

一方、自身の内面を深く反映した楽曲も多く存在します。特に4曲目の『バニラのコート』は、河村隆一自身も「メインの楽曲」「最重要曲」と語るほど思い入れの強い作品で、2007年のアルバム『evergreen anniversary edition』においてセルフカバーされています。また、13曲目の『あの日の忘れ物』は、彼が最も気に入っているタイトルだといい、「忘れ物はいつか取りに帰れる」「忘れてきたものと捨ててきたものは違う」という彼の考え方が反映されています。

多彩な楽曲と充実の収録内容

アルバムには、様々なタイプの楽曲が収録されており、聴き手の心を掴む多彩な魅力が詰まっています。バラードからロックナンバーまで、幅広い音楽性を堪能できる作品となっています。初回限定盤にはボーナス・トラックとして『おやすみ』が収録されているのもポイントです。

まとめ

『VANILLA』は、バンドサウンドを前面に押し出しながらも、社会へのメッセージや自身の内面を深く反映した楽曲がバランスよく配置された、河村隆一の音楽キャリアにおける重要な作品です。彼の飽くなき創作意欲と、時代への鋭い視点を垣間見ることができる、聴き応えのある一枚と言えるでしょう。楽曲の編曲には葉山拓亮氏、長岡成貢氏も参加しており、多彩な才能が集結した作品でもあります。 このアルバムは、彼の音楽性を多角的に理解する上で欠かせない作品であり、音楽ファンのみならず、彼の音楽に初めて触れる人にも強くおすすめできる作品です。

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