VDM

VDM（Vienna Development Method）は、1960年代から1970年代にかけてIBMのウィーン研究所で開発された形式手法です。この手法は、ソフトウェアやシステムの仕様を数学的な形式で記述し、厳密な検証を可能にすることを目的としています。

VDMの歴史

VDMは、ソフトウェア開発の初期段階で生じる曖昧さや矛盾を排除し、より信頼性の高いシステムを構築するために生まれました。当時、ソフトウェア開発は急速に進歩していたものの、仕様の記述や検証が不十分なために多くの問題が発生していました。そこで、形式手法を用いて仕様を厳密に記述し、数学的な証明によって検証を行うアプローチが注目されるようになり、VDMはその代表的な手法の一つとして発展しました。

VDM-SL

VDMの中核となる仕様記述言語がVDM-SLです。VDM-SLは、1996年にISO標準（ISO_IEC_13817-1）として正式に採用され、国際的に認められる形式仕様言語となりました。VDM-SLは、データ構造や操作を数学的なモデルで記述することができ、仕様の正確性や整合性を確保するために使用されます。この言語を使用することで、開発者はシステムが満たすべき要件を明確に定義し、実装における誤りを早期に発見することが可能になります。

VDM++

VDM-SLをオブジェクト指向の概念で拡張したものがVDM++です。VDM++は、欧州連合（EU）のESPRIT計画におけるAFRODITEプロジェクトで開発されました。オブジェクト指向の概念を取り入れることで、より複雑なシステムの仕様を記述しやすくなり、再利用性や保守性が向上します。VDM++は、大規模なソフトウェア開発プロジェクトにおいて、特に有効な手法として活用されています。

VDMの活用

VDMは、形式手法の中でも特に実用性が高い手法として知られています。その適用範囲は、組み込みシステム、リアルタイムシステム、安全性クリティカルなシステムなど、多岐にわたります。VDMを用いることで、システムの挙動を正確にモデル化し、エラーやバグを事前に発見しやすくなります。また、VDMで記述された仕様は、実装のガイドラインとしても利用でき、開発プロセス全体の品質向上に貢献します。

VDMのモデリングツール

VDMを利用する際には、専用のモデリングツールを使用することが一般的です。これらのツールは、VDM-SLやVDM++の記述を支援し、仕様の検証やシミュレーションを可能にします。例えば、Overture Toolは、オープンソースのVDMモデリング用IDEとして提供されており、VDMを用いた開発を支援しています。

まとめ

VDMは、ソフトウェア開発における形式手法の基礎となる重要な技術であり、その厳密な記述と検証能力は、高品質なシステム開発に不可欠です。VDM-SLやVDM++といった仕様記述言語や、モデリングツールなどの支援技術を効果的に活用することで、より信頼性の高いシステムの開発が可能になります。

外部リンク

FMVDM：VDMの言語仕様とモデリング支援ツールのダウンロードが可能です。
Overture Tool（英語）：オープンソースのVDMモデリング用IDEが利用できます。

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