VOS3

VOS3（Virtual-storage Operating System 3）とは

VOS3は、日立製作所が開発・販売しているメインフレーム用のオペレーティングシステムです。VOS3は、その高い信頼性と性能から、大規模なシステム運用に不可欠な存在として、長年にわたり多くの企業や組織で利用されてきました。

VOS3の歴史

VOS3の開発は、1970年代初頭の通商産業省（現経済産業省）による大型コンピュータ共同研究プロジェクトに端を発します。当時、海外メーカーに対抗するため、国内の主要コンピュータメーカーがグループを組み、技術開発を進めました。日立製作所と富士通は、IBM互換機であるMシリーズを共同開発し、VOS3はそのMシリーズ向けに開発されたオペレーティングシステムです。

この共同研究は、1972年から1976年にかけて行われ、各グループに多額の補助金が拠出されました。このような国家的なプロジェクトを通じて、日本のコンピュータ産業は大きく発展しました。

VOS3の基本機能

VOS3は、メインフレームのオペレーティングシステムとして、以下のような高度な機能を提供します。

多重仮想記憶: 複数のプログラムを同時に実行できるように、仮想記憶空間を効率的に管理します。
マルチプロセッササポート: 複数のCPUを搭載したシステムで、処理能力を最大限に引き出します。
資源集中管理機能: システム全体の資源（CPU、メモリ、ストレージなど）を集中管理し、効率的な運用を可能にします。
リモートバッチ機能: 遠隔地からバッチ処理を実行できます。
オンラインリアルタイム制御機能: オンラインでのリアルタイム処理をサポートします。
RASIS機能: 高い信頼性（Reliability）、可用性（Availability）、保守性（Serviceability）、保全性（Integrity）、安全性（Security）を実現するための機能です。
TSS機能: 複数のユーザが同時にシステムを利用できる機能です。

初期のVOS3は、先行OSであるVOS2からのスムーズな移行を考慮し、システムソフトウェアなどが共通化されていました。最初のVOS3システムは、1977年4月に日立製作所中央研究所にM-180システムと共に納入されました。

VOS3の機能拡張プロダクト

VOS3は、その進化とともに、多くの機能拡張プロダクトが開発されてきました。以下にその主なものと特徴を挙げます。

VOS3/SP21

VOS3/SP21は、VOS3/SP系のオペレーティングシステムをIBM産業スパイ事件後に再コーディングしたものです。これにより、M-240H、M-260H、M-280Hをサポートし、以下の拡張機能を提供します。

大容量ディスクサポート
資源集中管理機能の強化
チャネル拡張
コンソール機能の強化
実記憶拡張（32MB）
スケジューラ拡張
JSS3, JSS4の機能拡張

VOS3/ES1

VOS3/ES1は、IBMのMVS/XAに対抗するために開発され、M/EXモードで動作します。31ビットアドレッシングと拡張チャネルシステム（ECS）をサポートし、1985年3月に出荷されました。M-68X、M-660H、M-640シリーズに対応し、主な拡張機能は以下の通りです。

31ビットアドレッシングのサポート
ECSは1986年1月出荷バージョンからサポート

VOS3/AS

VOS3/ASは、IBMのMVS/ESAに対抗し、M/ASAモードで動作します。仮想拡張記憶機構を使用し、47ビットアドレッシング（16テラバイト）をサポートします。M-880、M-860シリーズに対応し、以下の拡張機能を提供します。

ACONARCチャネルサポート
PRMA（Processor Resource Management Assist）によるプロセッサ資源分割管理機構の支援

VOS3/FS

VOS3/FSは、MP5800、MP5600、MP6000シリーズをサポートする製品です。

VOS3/LS

VOS3/LSは、IBM z/OS連携システムであり、64ビットアドレッシングをサポートします。AP8000シリーズに対応し、2002年4月に出荷されました。

64ビットアドレッシングサポート

VOS3/US

VOS3/USは、VOS3/LSの後継となるオペレーティングシステムで、2008年2月に発表され、同年7月に出荷が開始されました。新しいハードウェアとしてAP8800シリーズに対応し、BladeSymphonyとの連携に必要な製品が標準パッケージとして提供されるようになりました。

まとめ

VOS3は、長年にわたり日立のメインフレームを支えてきた重要なオペレーティングシステムです。その高度な機能と拡張性により、大規模なシステム運用に欠かせない存在であり続けています。過去から現在までのコンピュータ技術の変遷と発展を語る上で、VOS3は重要な役割を果たしていると言えるでしょう。

外部リンク

VOS3ホームページ

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