W3

『W3（ワンダースリー）』：手塚治虫のSF作品とその波乱の制作過程

手塚治虫原作のSF漫画作品『W3（ワンダースリー）』、そしてそれを原作とした虫プロダクション制作のテレビアニメは、1960年代の日本のアニメーション史において、幾多の困難を乗り越えて生まれた作品として知られています。本作品は『ジャングル大帝』に続く虫プロの3番目のアニメであり、社内の人員整理という背景から企画が持ち上がったとされています。

企画の紆余曲折と「W3事件」

当初の企画は、他社から類似したアニメが2度も制作されたことで、設定変更を余儀なくされました。この設定変更に伴い、社内では内通者問題が発生し、不幸にも『W3』が連載されていた『週刊少年マガジン』で、問題の発端となった作品と同時掲載されることになります。この事態を快く思わなかった手塚治虫の意向により、『W3』は『マガジン』での連載をわずか6回で打ち切られ、『週刊少年サンデー』への移籍を余儀なくされました。この出来事は後に「W3事件」として知られることになります。アメリカでは『THE AMAZING 3』のタイトルで放送され、エンドロールでは手塚の名前が誤記されるというハプニングもありました。

近未来地球の運命をかけた調査

物語は、1970年（連載当時の近未来）を舞台に、人類の無益な戦争が銀河連盟の耳に届いたことから始まります。銀河連盟は地球調査のため、W3と呼ばれる3人の銀河パトロール要員を地球に派遣し、地球存続か消滅かの判断を委ねます。W3の3人は、それぞれウサギ、カモ、ウマの姿に変身し、地球で調査活動を行います。

主人公の星真一少年は、負傷したW3を匿い、彼らの行動を共にすることになります。一方、真一の兄である光一は、世界平和を目指す秘密機関「フェニックス」の一員として活動しています。当初、W3は地球人の暴力性に嫌悪感を抱いていましたが、真一の純粋さに触れ、考えを改めるようになります。しかし、プッコの不手際から反陽子爆弾が悪の組織に渡ってしまい、W3と真一は、爆弾を取り戻すため奮闘します。

魅力的なキャラクターたち

主要キャラクターは、W3の3人と星兄弟を中心に、個性豊かな面々が揃っています。ボッコはW3の隊長で、少佐の階級を持つ女性型の宇宙人。真一に恋心を抱く一面も。プッコは中尉で短気だがおっちょこちょい。ノッコは兵長で、大らかでのんびりとした性格です。星光一は漫画家を装う秘密機関員で、弟の真一とは対照的な性格。その他、真一の担任である馬場先生や、弟妹を支えるカノコ、在野の科学者である五目など、物語を彩る個性的なキャラクターが登場します。

アニメ版と漫画版の違い、そしてその成功と挫折

1965年から1966年にかけてフジテレビ系で放送されたアニメ版は、全56話（52話＋リピート放送4回）のモノクロ作品でした。提供はロッテ。アニメ版では、漫画版とは大きく異なる部分も多く、ストーリー展開やキャラクターの性格などに違いが見られます。

アニメ版は当初好調な視聴率を記録していましたが、TBSが同時間帯に『ウルトラQ』を放送開始すると、視聴率は急落。月曜夜の時間帯に変更せざるを得なくなりました。この出来事には、手塚治虫自身も大きなショックを受けていたようです。

多様なメディア展開

『W3』は漫画、アニメにとどまらず、DVD、ネット配信、そして舞台など、様々なメディアで展開されています。2008年にはDVD-BOXが発売され、2019年からはYouTubeで配信が開始。2017年にはセリフ無しの舞台作品が上演され、2025年には新たな舞台化が予定されています。

まとめ

『W3』は、その制作過程における困難や、時代背景を反映した作品であり、手塚治虫の代表作の一つとして、現在も多くのファンを魅了し続けています。漫画版とアニメ版の違い、そして「W3事件」など、様々なエピソードも合わせて、その魅力に触れてみてください。

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