W86 (核弾頭)

W86核弾頭の概要

W86核弾頭は、アメリカ合衆国が開発を進めていた核兵器で、主にMGM-31 パーシング II弾道ミサイルに搭載されることを目的としていました。この弾頭は、特に地中貫通能力を持つよう設計されており、硬化目標への攻撃を想定していましたが、その開発は1980年9月に中止されました。

MGM-31 パーシング IIミサイルとその背景

MGM-31 パーシング IIミサイルは、1973年にその開発が開始されたもので、冷戦時代における核抑止力の一環として重要な役割を果たすことが期待されていました。このミサイルは、SS-20ミサイルというソ連の脅威に対抗するために設計されており、その性能向上のためにいくつかの改良が施されていました。

当初、MGM-31 パーシング IIミサイルは、W86弾頭を搭載する計画で開発が進められていましたが、後の段階で発生した設計変更により、射程延長が必要とされるようになりました。これは、狭い地域に対する効果的な核攻撃を求められる中で、移動能力や発射の柔軟性が重要視されたためです。

W86弾頭の設計と目的

W86は、核弾頭の中でも特に硬化目標への攻撃のために設計されていました。そのため、PERSHING IIミサイルに搭載される際には、標準的な遅延信管が使用される予定でした。これにより、地中の構造物や fortified targets への直接的な攻撃が可能となるはずでした。

しかし、計画の変更により、MGM-31 パーシング IIミサイルの任務は硬化目標攻撃から外れ、W85という別の核弾頭が搭載されることになりました。W85は、より柔軟性があり、異なる種類の目標に対しても効果を発揮できるよう設計されていました。W86の開発中止は、それまでの軌道修正の結果として生じたものでした。

開発中止の理由

W86の開発が中止された背景には、戦略環境の変化が強く影響しています。冷戦の早期において、アメリカは大規模な核兵器プログラムに注力していましたが、国際情勢が変化する中で、核兵器の数やタイプに関する見直しが行われるようになりました。その一環として、W86は不要な兵器とみなされ、開発が停止されたのです。

結論

最終的に、W86核弾頭は、W85に完全に置き換えられることとなり、MGM-31 パーシング IIミサイルにはW85のみが搭載されることになりました。これは、冷戦時代におけるアメリカの核戦略や、地政学的な変化の中での兵器開発の動きを反映した結果と言えます。W86は、地中貫通攻撃能力に優れたデザインながらも、実戦的な運用段階に進むことはありませんでした。

もう一度検索