WAR (野球)

WAR（Wins Above Replacement）

WARは「Wins Above Replacement」の略称であり、選手がチームにどれだけの勝利をもたらしたかを示すセイバーメトリクスの指標です。この指標は打撃、守備、走塁、投球といったさまざまな側面を考慮し、選手の貢献度を統計的に評価します。

概要

WARは、代替選手（Replacement）と呼ばれる、平凡な成績を持つ選手と比較してどれだけの勝利を上積みできるかを示すものです。この代替選手とは、一般的に簡単に手に入る、またはそれほどの能力を持たない選手を指します。アメリカの統計アナリスト、トム・タンゴは、彼らを「最低の年俸で獲得可能な選手」と定義しました。WARが0の選手は、代替選手と同等のレベルを示します。2018年のMLBでは、ムーキー・ベッツが10.4のWARで最も高評価を受け、一方でクリス・デイビスは-3.1で最下位でした。

WARの算出方法

WARの計算には様々な指標が使用され、各機関によって異なる算出方法が存在します。FanGraphsでは、主にwRAA（Weighted Runs Above Average）やUZR（Ultimate Zone Rating）を用いて評価します。Baseball Referenceでは、打撃得点や守備得点を基に算出されるなど、体系的な違いがあります。

野手の算出

ファングラフでは以下のような手順でWARを計算します。まず、wRAAを算出し、次にパークファクターを考慮して補正を加えます。その後、UZRを計算し、守備位置による補正を施し、最終的にRAR（runs above replacement）に基づきWARが導き出されます。したがって、選手の貢献度は個別のプレイの実績に根差した詳細な分析を経て決定されます。

投手の算出

投手のWARは主に失点率やFIP（Fielding Independent Pitching）を基に算出されます。FIPを使用することにより、守備の影響を排除して投手個人の貢献を測ります。その後、リプレイスメントレベルを考慮に入れ、得られた結果に対してシーズン補正を行います。これにより、何試合あたりのWARが算出され、最終的なWARが導出されます。

WARの評価基準

WARは選手間の比較を単一の指標で行うのに適しており、特に選手の適正年俸を算出する際に重宝されます。リーグ全体のWARから適切な年俸を算出する方法は、そのシーズンにおける選手の価値をシンプルに表現するために役立ちます。ただし、WARの計算は複雑で、さまざまな統計的要素を持つため、数値が示す選手の評価は一部に過ぎません。

批判と課題

WARに対しては、その算出方法の複雑性やバイアスには批判が存在します。特に、歴史的な選手との比較で現代の選手が過大評価されるという意見があります。また、計算に使用される指標間で大きな乖離が生じることもあり、選手の価値を正確に測るためには他の指標も重要となります。これらの背景を踏まえ、WARは選手比較の一つの手段とはいえ、他の要素と合わせて考慮する必要があります。

そのため、WARはあくまで選手の貢献度を総合的に把握するための目安として用いるべきであり、単体での絶対的な評価を避けるべきでしょう。

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