WEST-21

WEST-21とは

WEST-21とは、西日本旅客鉄道（JR西日本）が急曲線における在来線の高速化を目的に構想した新型車両の開発計画です。この計画は1993年12月20日に発表され、名称の由来は「West Japan Railway Company's Swift Train for 21st Century」にあります。急曲線による速度制限を解決し、高速輸送の実現が目指されました。

背景

伯備線や紀勢本線など、JR西日本の重要なフィーダー線は、急曲線が多く存在し、その結果、列車の表定速度が80 km/h以下に抑えられることが多かったです。このような状況では、他の輸送手段との競争力が失われる恐れがあり、表定速度100 km/h以上の達成が求められていました。しかし、高速化には地上設備への大規模な投資が必要であり、新たに急曲線を走ることができる車両の開発が検討されることになりました。

開発の進捗

構想が発表されてからは、約3年後に試作車両を製造し、2000年頃には伯備線と紀勢本線に量産車両を導入する計画が立てられました。しかし実際には試作車両は完成せず、2000年以降も実車が製造されることはありませんでした。それにもかかわらず、1996年にはより既存技術を利用した283系車両が製造され、これも急曲線に対応した車両開発の一環として位置づけられています。

開発コンセプト

WEST-21の開発は、従来の車両設計にとらわれず、鉄道の持つ可能性を広げることを目指していました。伯備線や紀勢本線において、表定速度100 km/h以上を目標に設定し、以下の性能基準が決められました。

• - 最高速度：130 km/h程度
• - 曲線通過速度：超過遠心加速度0.2g程度を許容
• - 乗り心地：自動車にひけを取らないレベル

これらの目標を達成するために、アクティブサスペンションや運転支援システム、新型連接台車などの新技術が検討されました。また、軽量素材の使用や台車の操舵機能、車体の強制傾斜技術を取り入れる予定でした。

技術開発の進展

鉄道総合技術研究所（鉄道総研）では、同時期にNEXT250と名付けられた要素技術開発計画が進められており、狭軌での高速走行を可能にする台車の開発が行われていました。急曲線の高速化に焦点を当て、JR西日本と共同で次世代高性能車両の技術開発が進められていました。

特に、曲線での走行安定性を向上させるための新型車体傾斜装置が開発され、制御付き自然振子車両が実用化されるなど、急曲線での性能向上に向けた取り組みが続きました。しかし、WEST-21そのものの実車製造は実現には至りませんでした。

紀勢本線における動向

紀勢本線でも、高速化の要望が高まり、1994年に紀勢本線活性化促進協議会が設立されました。1996年に協定が締結され、同年に高速化工事が始まり、1997年には実施が完了しました。この際、既存の381系を基本とした高速化案も検討されましたが、最終的には283系の一部が投入されました。

高速化計画には、他の手段でのアプローチも検討されており、フリーゲージトレインによる新在直通運転などが主流になる傾向が見られました。こうした中でも、WEST-21は一部期待され続け、将来的な投入の可能性も議論され続けました。

結論

WEST-21プロジェクトは、JR西日本における急曲線走行の革新を目的とした重要な取り組みと言えます。しかし、実車の開発が実現しなかったことや他の競合プロジェクトの出現から、その成果はいまだ実を結んでいないのが現状です。今後の鉄道技術の進化も含め、引き続き注目が必要です。

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