XM1203 NLOS-C

XM1203 NLOS-C 自走榴弾砲

XM1203 NLOS-Cは、アメリカ合衆国がかつて開発していた155mm自走榴弾砲です。NLOS-Cは、Non-Line-of-Sight Cannon（非視線砲）の略称で、アメリカ陸軍の将来戦闘システム（FCS）有人地上車両（MGV）プログラムの主要な構成要素として位置づけられていました。

概要

NLOS-Cは、老朽化したM109自走榴弾砲を置き換えることを目的として開発が進められていましたが、2009年12月に計画は中止されました。この計画には、かつて存在したXM2001クルセイダー自走榴弾砲の技術が応用されていました。

NLOS-Cは、ネットワーク化された長距離照準システムと連携し、戦闘部隊への精密な攻撃支援、近接戦闘における継続的な火力支援、そして戦術的なスタンドオフ交戦能力を提供することを目指していました。

従来のM109自走榴弾砲にはない機能の追加も計画されていました。特に、複数の種類の砲弾を迅速に切り替える機能が重要視され、照明弾、榴弾、エリアエフェクト弾などを必要に応じて使い分けることが可能になるはずでした。これにより、NLOS-Cは多様な射撃命令に柔軟に対応できる能力を持つことが期待されていました。

計画では、M109よりも短い射撃間隔と、MRSI（Multiple Rounds Simultaneous Impact：異なる軌道で発射された複数の砲弾を同時に目標に命中させる能力）の実現が目指されていました。このMRSI能力により、敵に移動や反撃の機会を与えず、乗員を削減しつつ発射速度を大幅に向上させることが可能になると考えられていました。これは、XM2001クルセイダーで開発された自動装填装置によって実現される予定でした。

さらに、強化された通信およびデータ機能により、ネットワーク化された高速機動部隊の一員として運用されることが想定されていました。これにより、友軍への誤射や巻き添え被害を低減しつつ、高精度かつ迅速な火力支援を提供し、支援を必要とする部隊への効果的な防御射撃を実現することを目指していました。車両のナビゲーションと照準情報は、GPSとネットワーク化された情報システムを通じて提供される予定でした。

給油方法の改善と砲弾の自動装填化によって補給時間を短縮し、2人の乗組員で砲撃システムを運用することも可能になるはずでした。

NLOS-Cは、MGVファミリーの中で最も重い車両の一つとなる予定でした。2003年6月時点での予測では、NLO（Non-Line-of-sight Objective）重量は必須戦闘能力で25.3トン、最大戦闘能力で29.2トンとされていました。

また、NLOS-Cは、NLOS-迫撃砲車と特に高い共通性を持つように設計されていました。

来歴

BAEシステムズは、M777榴弾砲の砲身を備えたテストベッドを開発し、2006年初頭にデモンストレーター試験を完了させました。

2008年5月、BAEシステムズは最初のNLOS-C試作車を発表しました。この試作1号車は、2008年6月にワシントンのナショナルモールで初めて一般公開されました。2009年までに、8台の試作車がアリゾナ州のアメリカ陸軍ユマ試験場に納入され、試験運用が行われました。BAEシステムズは、最終的に合計5台の試作車を製造しました。

しかし、2009年4月、ロバート・ゲーツ国防長官はMGV計画全体の終了を勧告しました。その後、議会は陸軍に対し、NLOS-Cを独立したイニシアチブとして継続するように指示しました。しかし、同年12月、国防総省の調達・技術・兵站担当次官であったアシュトン・カーターが、陸軍に対し計画の中止を指示しました。カーターは、陸軍に対しパラディン改修計画（M109A7）を開始するように指示し、NLOS-Cで開発された電子機器の一部と電気駆動装置はM109A7に統合されることとなりました。

脚注

出典

参考文献

* Pernin, Christopher; Axelband, Elliot; Drezner, Jeffrey; Dille, Brian (2012). Lessons from the Army's Future Combat Systems Program (PDF) (Report). RAND Corporation.

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