Y-10 (航空機)

Y-10（运-10）

Y-10は、中国が自主開発を目指した国産のジェット旅客機です。このプロジェクトは、国営の上海航空機製造が、ボーイング707の設計をコピーする形で進められました。開発は2機の試作機の製造まで進みましたが、商業運航に至ることはなく、1986年には実質的に開発が中止されました。

開発の起源

1973年、中央軍事委員会は上海航空機製造に対して、大型旅客機の開発を承認しました。しかし、中国には、当時、国産の大型ジェット機を開発した実績が全くありませんでした。これを受けて、当初の設計計画は、ソ連製のTu-104に基づくものから、ボーイング707のコピーに変更されました。そして、1975年6月に設計図が完成しました。

このY-10の設計において、オリジナルのボーイング707と比較してキャパシティは若干少なく、機首周りも変わっている点が特徴です。エンジンは国産を断念し、ボーイング707のスペアとしてアメリカから購入したものを使用しました。

試験と開発の経過

1976年には、地上試験機として01番機が完成しました。そして、1978年11月には飛行可能な試験機02番機が完成し、1980年9月26日に初飛行を成功させました。しかし、1982年には03番機の完成に向けたさらなる資金が認められなかったことから、開発の継続が困難になりました。

1985年末までには、Y-10は中国各地の主要都市を飛行したものの、技術力不足が目立つ結果となり、1986年には正式な中止文書もなく開発計画が事実上終了しました。

現状と課題

Y-10の飛行には成功したものの、その成功は当時の中国の経済的な環境や工業力から見ても、商業運航には至りませんでした。ボーイング707自体が1950年代に開発された機体であったため、Y-10が実用化された場合でも、新開発機に対して性能面での劣位は避けられなかったと言えるでしょう。

現在、Y-10の機体（登録番号B-0002）は、上海航空機製造の拠点である中国航空大場基地に静態保存されています。これは、Y-10の歴史を語る上で重要な存在となっています。

性能要目

• - 乗員: 9人（操縦士5名、客室乗務員4名）
• - 乗客: オールエコノミーの場合149席または179席
• - 全長: 42.933 メートル
• - 全幅: 42.242 メートル
• - 高さ: 13.420 メートル
• - 自重: 58,120 kg
• - 最大離陸重量: 110,227 kg
• - エンジン: プラット・アンド・ホイットニー JT3D-7 ターボファン
• - 巡航速度: 974 km/h
• - 航続距離: 6,400 km
• - 限界上昇限度: 13,420 メートル

Y-10は、中国の航空機開発の歴史において重要な一歩となった試みであり、その経過や性能から多くの教訓を得ることができる事例です。

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