YC-15 (航空機)

YC-15：アメリカ空軍の輸送機計画

YC-15は、アメリカ空軍が求めた「先進中型短距離離着陸輸送機計画」(AMST)に基づいて、マクドネル・ダグラスが製造した軍用輸送機です。この機体は、1970年代前半にC-130を代替する目的で開発が開始され、短距離離着陸が可能な特別な技術を搭載しています。

開発の背景

アメリカ空軍は、新たな輸送機を求めてAMST計画を立ち上げました。これは、C-130の後継機として、特に短距離離着陸能力を重視したものでした。この際、マクドネル・ダグラス社はYC-15の開発に取り組むこととなりました。

YC-15の技術的特徴

YC-15の大きな特徴は、EBF（Externally Blown Flaps）方式によるパワード・リフト技術を採用している点です。この技術は、ターボファンエンジンの排気をフラップに直接当てることで上昇力を得ることができます。また、二重隙間フラップを使うことで、コアンダ効果を通して揚力を増加させる仕組みも持っています。これにより、短距離離着陸の性能を大いに向上させることができました。

構造と仕様

YC-15は、胴体や尾翼にはC-130の流用がなされ、主翼は高翼配置の直線翼、翼断面にはスーパークリティカル翼型が採用されています。また、尾翼はT字型に設計されているのも特徴です。機体には、推力68.9kNを発揮するP&W JT8Dターボファンエンジンを4基搭載しています。

この機体の主要なスペックには、全長37.9メートル、全幅は試作1号機で33.6メートル、試作2号機で40.4メートル、全高は13.2メートル、空虚重量は47.6トン、最大離陸重量は98.286トン、最大積載量は35トンまたは武装兵員150名といった数値があります。最高速度は861 km/h、航続距離は4,810 kmで、通常は3名の乗員が搭乗します。

試験飛行と結果

1975年8月26日、YC-15の初飛行が行われ、2機の試作機により約600時間の飛行試験が実施されました。しかし、YC-14との競争の中で、短距離離着陸性能の過度な追求がコストを押し上げ、1979年にAMST計画が中止されたため、YC-15も開発を終えることとなりました。その後、機体の1機はデビスモンサン空軍基地で保管され、もう1機は博物館に送られました。

その後の展開

1機は1997年に技術試験機として復元される計画が立てられましたが、最終的には実現されることはなく、計画が中止となりました。それでも、YC-15が開発過程で得たEBF方式によるパワード・リフト技術は、後にマクドネル・ダグラス（現ボーイング）によって開発されたC-17 グローブマスターIIIに活かされることになります。

このようにYC-15は、制式採用には至らなかったものの、その技術的な革新は後の航空機開発に影響を与えており、重要な役割を果たしました。

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