YJ-62 (ミサイル)

YJ-62対艦ミサイル

YJ-62（鷹撃-62）は、中華人民共和国が開発した亜音速の長射程対艦ミサイルであり、輸出市場ではC-602の名称で知られています。このミサイルは、中国人民解放軍海軍の主要な対艦打撃能力を構成する重要な兵器システムの一つです。

開発経緯

1970年代に運用が開始されたYJ-6/C-601空対艦ミサイルが存在しますが、YJ-62はこれとは直接的な関連性を持たない独立した開発ラインに位置づけられます。むしろ、先行して配備されたYJ-83対艦ミサイルの設計を発展・大型化させた派生型にあたります。開発は中国海鷹機電技術研究院（CHETA; 第三航空宇宙学院）が担当しました。本ミサイルの存在が公にされたのは2004年で、この時、新型の052C型駆逐艦（蘭州級）と共にその姿が披露されました。本格的な実戦配備と運用は、概ね2005年頃から開始されたものと推測されています。

性能と設計

YJ-62は、ベースとなったYJ-83から設計が全面的に見直されており、一回り大きな弾体を持っています。この大型化により、より強力な弾頭を搭載することが可能となり、弾頭重量は210キログラムに強化されました。これにより、大型の水上艦艇に対しても効果的なダメージを与えることが期待できます。また、ミサイルの射程も大幅に延伸されました。アメリカ海軍情報局（ONI）の分析では、YJ-62は最大150海里（約280キロメートル）の射程を持ち、中型から大型の艦船を確実に撃破する能力を持つように設計されているとされています。

派生型

YJ-62のさらなる改良型として、長距離目標への対処能力を高めたYJ-62Aが開発されています。このYJ-62Aは、通常型を大きく上回る最大400キロメートル（約220海里）という長射程を実現していると報告されています。

飛行特性

YJ-62およびその派生型は、シースキマーと呼ばれる飛行方式を採用しています。これは、ミサイルが目標へ接近する終末段階において、海面から極めて低い高度を維持しながら飛行するというものです。これにより、敵艦艇のレーダー網による早期発見を困難にし、迎撃を回避する可能性を高めます。特に、波浪階級（シーステート）が6程度の荒れた海況下でも、ミサイルは7メートルから10メートルという低い高度で飛行することが可能であり、目標に対する奇襲効果を発揮します。

他ミサイルとの比較

YJ-62の射程や弾頭重量といったスペックは、ロシアが開発した「クラブ」（カリブル）シリーズの対艦攻撃型ミサイルとある程度の類似性が見られます。しかし、クラブミサイルの一部が終末攻撃時に超音速で突入する性能を持つとされるのに対し、YJ-62シリーズは終始亜音速での飛行にとどまる点が大きな違いとして挙げられます。

運用

YJ-62は主に中国人民解放軍海軍の駆逐艦やフリゲート艦などに搭載され、沿岸防衛から外洋における対艦戦まで幅広いシナリオでの運用が想定されています。長大な射程とシースキマー能力を組み合わせることで、遠距離から敵の警戒範囲外からの攻撃を可能とする重要な戦略的アセットとなっています。

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