Ye-8 (航空機)

Ye-8について

Ye-8（ロシア語: Е-8）は、ソ連のミコヤン・グレビッチ設計局によって開発された戦闘機で、2機の試作が行われました。試作1号機はYe-8/1、試作2号機はYe-8/2と呼ばれ、正式採用が決まればMiG-21Mという型式が与えられる予定でした。

開発の背景

MiG-21は軽量でコストパフォーマンスに優れ、東側諸国の空軍で広く使用されたベストセラー戦闘機です。しかし、その初期型であるMiG-21FとMiG-21F-13にはレーダーが装備されていないという欠点がありました。このため、1957年にレーダーを搭載するための開発がスタートし、その後MiG-21PFが実用化されます。しかし、ソ連空軍はさらに大型のレーダーを備えた全天候型の戦闘機の開発を求めました。

1960年5月、ミコヤン・グレビッチ設計局はその要求に応じて、改良型の開発に着手しました。1960年12月には初の1/20モデルが完成し、1961年6月には最終仕様が決定しました。この新型機はMiG-21PFの構造をベースにし、空気取り入れ口を胴体下部に移動し、TsD-30TP サプフィールレーダーを機首に搭載。また、燃料タンクをインテグラル化し、Ye-6T/3で得たカナードを導入しました。

胴体は新しい設計がなされましたが、尾翼はMiG-21PFのものが流用され、動翼の作動機構や油圧システムもそのまま使われています。水平尾翼は若干下がった位置に取り付けられ、垂直尾翼は大型化されて、飛行特性の向上が図られました。空気取り入れ口の位置は前部脚の後方に置かれ、万が一の利用時に前脚がゴミを拾うことを避ける設計となっています。

性能と武装

Ye-8は固定武装を搭載せず、当初はK-23長距離空対空ミサイルを2発搭載する計画でしたが、最終的にはK-13空対空ミサイルを2発搭載する仕様に変更されました。主翼の下に加え、主翼の端にも空対空ミサイルが装着可能でした。

エンジンについては最初に計画されていたR-11F-300から、開発の過程でR-21F-300に変更されました。試作1号機は1962年3月5日に初めて製造され、同年4月17日に初飛行を果たし、続いて6月29日に試作2号機も飛行試験を受けました。しかし、空気取り入れ口の可変ランプにトラブルが生じ、エンジンの不調も相次いだため、最終的にこの機体の採用は見送られました。

結果と影響

Ye-8は実用化には至りませんでしたが、ロシアの後の機体設計に多くの影響を与える要素を含んでいました。特に、胴体下部に空気取り入れ口を設置した点は評価され、後のMiG-23などへと受け継がれました。1988年に西側にその存在が知られた際は、ミコヤンがインド空軍向けの新型機を開発しているとの噂も流れました。

仕様

• - 全長：14.90 m
• - 全幅：7.15 m
• - 翼面積：23.13 m²
• - 空虚重量：6,800 kg
• - 最大離陸重量：8,200 kg
• - 発動機：R-21F-300ターボジェットエンジン×1
• - 最大速度：2,230 km/h
• - 実用上昇限度：20,000 m

また、Ye-8の空気取り入れ口のデザインは、1956年に初飛行したF-107と類似していることも注目され、設計思想についての議論を呼びました。

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