IFデザイン賞

iFデザイン賞

iFデザイン賞は、ドイツのハノーファーに本拠を置くデザイン振興のための国際機関、インダストリー・フォーラム・デザイン・ハノーファー（iF）によって、1953年以来毎年開催されている国際的なデザイン賞です。世界中の工業製品をはじめとする多岐にわたる分野から、特に優れたデザインが選定・表彰されます。

世界3大デザイン賞としての地位

iFデザイン賞は、アメリカのIDEA賞（International Design Excellence Awards）、同じくドイツのレッドドット・デザイン賞（Red Dot Design Award）と並び称される、世界的に最も権威のあるデザイン賞の一つです。これらの賞は「世界3大デザイン賞」として知られており、受賞することはデザイン分野における国際的な高い評価を得たことを意味します。

審査カテゴリ

iFデザイン賞では、現代のデザイン領域を幅広くカバーするために、以下の7つの主要カテゴリを設定しています。

プロダクト（Product）
パッケージ（Packaging）
コミュニケーション（Communication）
サービスデザイン（Service Design）
建築（Architecture）
インテリア／建築（Interior Architecture）
* プロフェッショナルコンセプト（Professional Concept）

これらの各分野において、革新性、機能性、美しさ、環境への配慮などが総合的に評価され、その年の優秀デザインが選出・表彰されます。

日本からの主な受賞例

長い歴史を持つiFデザイン賞では、日本からも数多くの優れたデザインが受賞しています。特に、それぞれの分野で初めての受賞や金賞を獲得した事例は、日本のデザイン力が世界に認められた瞬間と言えるでしょう。

記録に残る特筆すべき受賞としては、2005年にコクヨのチェア「AGATA/D」が日本のチェアとしては初めて金賞を受賞したことが挙げられます。自動車分野では、2007年にレクサス「GS」と「IS」が日本車として初の金賞に輝きました。

デジタルカメラでは、2008年にリコーの「Caplio GX100」が金賞を受賞。日本の鞄業界からは、2009年にARTPHEREの「K-line F4ニューダレス」が初の受賞を果たしました。

ソニーは、デジタル一眼カメラ「NEX-5/NEX-3」のユーザーインターフェース（2011年金賞）やパーソナルコンピュータ「VAIO」のソフトウェア「VAIO Media Gallery」（2011年デザイン賞）など、複数の製品やインターフェースで受賞しています。

生活家電分野では、プラマイゼロ株式会社の掃除機「コードレスクリーナーY010」が2015年に金賞を受賞し、デザイン性の高い家電製品が評価される例となりました。

公共空間のデザインに関連しては、錦城護謨株式会社の視覚障がい者誘導用ブロック「HODOHKUN Guideway」が、2016年にプロダクト分野のパブリックデザインカテゴリーにおいて日本初の金賞を受賞しています。また、建築部門ではSUGAWARADAISUKE建築事務所株式会社が、2019年に日本人として初めて2作品（「下タ町醸し室 HIKOBE」と「山中湖村平野交差点バス待合所・観光案内所」）同時受賞という快挙を成し遂げています。

通信機器分野では、トリニティ株式会社のスマートフォン「NuAns NEO」が2017年にTelecommunicationカテゴリーで日本初の金賞を獲得しました。調理器具では、穴織カーボン株式会社のカーボン製無水調理鍋が複数回受賞しており、「ANAORI CARBON POT DISC」は2019年に金賞を受賞しています。

ユニークな受賞としては、2022年に「みんなの銀行」が日本の金融機関として初めてデザイン賞を受賞し、サービスのUX/UIデザインの重要性が増していることを示しました。他にも、家庭用製品、工業用機器、パッケージデザインなど、幅広い分野から日本の優れたデザインが毎年選ばれています。

これらの受賞は、単に製品や建築物の外観の美しさだけでなく、機能性、使いやすさ、安全性、環境負荷低減への配慮、そして新しいコンセプトの提案など、デザインの持つ多様な価値が国際的に認められた証と言えます。iFデザイン賞は、優れたデザインの重要性を広く社会に伝える役割も担っています。

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