Marathon

Marathonは、ゲーム開発スタジオであるBungieが手掛けた一人称視点シューティング（FPS）ゲームシリーズです。1994年の初代『Marathon』を皮切りに、1995年には『Marathon 2: Durandal』、そしてシリーズ完結編となる『Marathon Infinity』が1996年にリリースされました。これら3作品全てがMacintosh向けに発売され、特に『Marathon 2』はWindows 95版も登場しました。2007年には『Marathon 2』のリメイク版である『Marathon: Durandal』がXbox 360向けにXbox Live Arcadeで配信され、より多くのプレイヤーがこの名作に触れる機会を得ました。さらに、2011年には『Marathon 2: Durandal』のエンジンを基にしたオープンソースのゲームエンジン「AlephOne」が正式に公開されています。

シリーズの特徴

FPSというジャンルがまだ黎明期にあった頃の作品でありながら、単なる敵を倒すだけではなく、複雑なストーリーと謎解き要素を重視している点が特徴です。当時の他のFPS作品と比較して、ポリゴンによる3Dマップを採用し、プレイヤーと共に戦う非プレイヤーキャラクター（NPC）も登場するなど、先進的な試みが随所に見られました。

各作品の概要

Marathon (初回作)

物語の舞台は西暦2794年。主人公が乗り組む巨大な世代宇宙船「Marathon」は、タウ・セティ星系の第4惑星への植民計画のために改造された火星の衛星デイモスです。主人公はこの船で科学警備隊の将校として任務に就いていました。しかし、突如として地球外生命体プフォールによる襲撃を受けます。主人公が惑星上のコロニーから船へ戻るシャトルに乗っていた際、Marathonに搭載された人工知能の一つ、デュランダルの指令によりシャトルが爆破されるという事態が発生します。この侵略は、実は暴走したデュランダルがプフォールの宇宙船を呼び寄せたことによって引き起こされたものでした。間一髪で脱出ポッドからMarathonへ帰還した主人公は、無事だった唯一のAIであるリーラから指示を受け、暴走したデュランダルとプフォールの双方を相手にした壮絶な戦いを強いられることになります。船には他にAIティコも搭載されていましたが、プフォールの攻撃により沈黙していました。

Marathon 2: Durandal

前作でプフォールの襲撃からMarathonを排除することに成功した後、主人公は敵船の中枢に潜入し、プフォールに隷属させられていた種族スフトの反乱を促すなど活躍しました。その頃、惑星のコロニーでは、Marathonから密かに送り込まれ市民に紛れていた9体のサイボーグ「ミョルニル4型」が立ち上がり、コロニー防衛を担いました。一方、プフォールの宇宙船を乗っ取ったデュランダルは、自身を船に転送し、およそ17年間銀河系を放浪します。この期間、デュランダルに拉致されていた主人公や、プフォールの捕虜となっていた人々（通称BOB: Born on Board）は冬眠状態にありました。放浪の末、デュランダルはスフトの故郷である惑星ロウォンを発見します。主人公は冬眠から覚めるや否やロウォンの地上へテレポートされ、すでにそこに到着していたプフォールとの戦闘に巻き込まれます。デュランダルの指示のもと、主人公は1000年前にプフォールに捕らえられたスフトの謎を解き明かすため、ロウォンの探索を開始します。

『Marathon 2』では、武器やキャラクターのグラフィック、そしてユーザーインターフェイスが前作から大きく刷新されました。また、前作では一方的に倒される存在だったBOBが、デュランダルによる改造と武装（主人公と同じマグナムピストル）を受けて主人公の戦闘をサポートするようになります。生身ゆえに脆いものの、彼らの射撃精度は高いという設定でした。

Marathon Infinity

惑星ロウォンでの激戦後、BOBたちはプフォールの輸送船を奪って地球へ帰還しますが、主人公は再びデュランダルに連れられ、新たに手に入れたプフォールの戦艦で宇宙を旅することになります。ロウォンでの劣勢を覆すため、プフォールは最終兵器タリ・ジームを使用し、ロウォンは衝撃波に呑まれるとデュランダルから告げられた主人公に、もはや選択の余地はありませんでした。やがて、地球暦29世紀末頃、地球人とプフォールの侵略を免れたスフトの一派カー（S'pht'Kr）の協力により、プフォールの本拠地とされる星系は消滅します。しかし、プフォールがタリ・ジームを使用したことは、予想外の事態を引き起こしました。ロウォンの太陽には古来から「何者か」が潜んでおり、それが再び目覚めつつあるというのです。その「何者か」は、宇宙全体を混沌へと導く存在であると示唆されます。デュランダルと主人公は、ロウォン近隣の小惑星帯にある謎の宇宙ステーションに足止めされ、身動きが取れない状況に陥ります。事態は混迷を極めますが、主人公はまずこの窮地から脱出することを目指します。

『Marathon Infinity』は、初代の暗闇と謎解きに重きを置いた難しさと、『Marathon 2』の比較的オープンなゲームプレイの間を取る形で調整されました。再び暗闇の表現が強化され、マップごとの明暗のコントラストが印象的になっています。物語の構成は、これまでのシリーズで張られていた伏線が読み取れるものの、前作までのような一本道の展開とは異なり、「渾沌」を中心とした多層的な構造をとります。時代や主人公の置かれた立場がめまぐるしく変化し、指示を与えるのもデュランダルだけではなくなります。敵味方の関係性も常に流動的です。謎解きの難易度も、『Marathon 2』よりは複雑になり、初代ほどではないにせよ、プレイヤーの思考力を試す要素が復活しました。特に、通常の進行ルートから外れた多数の隠しマップへの分岐が用意されており、これらを探し出すことがシリーズ全体の謎をさらに深める鍵となっています。

開発ツールとゲームエンジン

『Marathon Infinity』には、公式の物理環境エディタ「Anvil」とマップエディタ「Forge」が同梱されていました。これにより、ユーザー自身がオリジナルのマップを作成できるようになり、コミュニティから多数のカスタムマップが生まれました。Mac OS X向けの「Pfhorge」やWindows向けの「Obed」など、サードパーティ製のマップエディタも存在します。

Bungieがマイクロソフトに買収される直前、同社は『Marathon 2』のソースコードを公開しました。これが後にオープンソースのFPSゲームエンジン「AlephOne」として2003年にリリースされます。AlephOneはMarathonシリーズ全てのゲームデータやカスタムマップを読み込むことが可能で、これによりシリーズ3作品全てがMacだけでなくWindowsやLinuxといった多様なプラットフォームでプレイできるようになりました。TCP/IP通信にも対応しており、異なるOS間でのオンライン対戦も実現しました。2011年末にはバージョン1.00がアナウンスされ、プロジェクトの大きな節目となりました。

これとは別に、Bungieはシリーズ3部作の英語版内容をまとめた「The Trilogy Release」として無償で配布しています。ただし、元々Classic Mac OS向けに開発されたゲームをWindowsやLinux、あるいはMac OS X（Classic環境を使用しない場合）で動作させるためには、AlephOneが必要となります。

日本語版

Marathonシリーズは、アテイン株式会社から3作品全てが日本語に翻訳されて発売されました。有志によってこれらの日本語版データもAlephOneでプレイ可能になるよう配布されていますが、権利関係は必ずしも明確にされていません。

他作品との関連

同じBungieが開発した後の作品にも、Marathonシリーズとの関連性が見られます。例えば、『Pathways into Darkness』や特に人気シリーズとなった『HALO』には、Marathonのロゴが登場するほか、Marathonのストーリーが『HALO』の物語に大きな影響を与えたことが知られています。

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