あずきバー

あずきバー：国民的氷菓の魅力

あずきバーは、井村屋が1973年から製造・販売している氷菓です。ぜんざいを凍らせたような独特の風味と、その驚くべき硬さで、多くの人に親しまれています。スーパーマーケットの9割で販売されていると言われ、まさに国民的アイスと言えるでしょう。

あずきバーの特徴

1本あたり65mlで、112キロカロリー。希望小売価格は80円（税抜）です。原材料は、砂糖、小豆、水あめ、食塩の4種類のみ。小豆本来の風味を最大限に引き出すため、添加物を極力使用しないシンプルな製法が特徴です。以前はコーンスターチが使われていましたが、現在はあずきパウダーに変更されています。1本に約100粒もの小豆が入っており、小豆の風味を存分に楽しめます。

井村屋は、小豆が縁起物であり健康にも良い食品であることから、毎月1日を「あずきの日」に制定。また、7月1日を「井村屋あずきバーの日」として、日本記念日協会から認定を受けています。あずきバーは2013年に商標登録されました。

あずきバーの硬さについて

あずきバーといえば、その「硬さ」が有名です。しかし、過去には刃物メーカーが誤った方法で硬度を測定し、サファイアよりも硬いという情報が広まってしまいました。実際には測定不能であり、メーカー自身も後に誤りを認めています。井村屋は、消費者に対して「歯を痛めないように注意」を呼びかけており、少し溶かしてから食べることを推奨しています。

硬さの理由

井村屋は、あずきバーが硬くなる理由として以下の3点を挙げています。

乳化剤や安定剤などの添加物を使用していないこと
乳固形分が入っていないこと
シンプルな素材をぎっしり詰めているため、空気の含有量が少ないこと

つまり、硬さは意図的なものではなく、素材と製法へのこだわりが生み出した結果なのです。過去には「やわらかあずきバー」も販売されましたが、硬さもあずきバーの魅力の一つとして、支持されませんでした。

あずきバーの製造工程

あずきバーの製造は、小豆の選別から出荷まで、全て井村屋の社内で行われています。その徹底した品質管理体制は、他の菓子製造会社ではあまり見られません。

1. 小豆の選別: 1日1億粒もの小豆を、色・形・重さなど6つの基準で選別します。ふるいや選別機、カメラなどを用いて、規格外の小豆を徹底的に排除します。
2. 小豆を炊く: 選別された小豆は、丸一日水に浸された後、丁寧に炊き上げられます。砂糖を入れるタイミングが重要で、熟練の職人が状態を見極めながら調整します。
3. 冷却: 炊き上がった原液は、バイターラインと呼ばれる金型に流し込まれ、急速に冷却されます。小豆が均等に分散するように攪拌しながら、素早く凍らせることがポイントです。
4. 棒の挿入: 全体が凍り切る前に、棒を差し込みます。

販売戦略

あずきバーは、全国のスーパーマーケットの9割で販売されており、氷菓市場で常に上位の売上を誇っています。2014年には、井村屋の売上高の約20%を占める主力商品となりました。購買層は、箱入りタイプは60-70代、コンビニの1本売りは40-50代が中心です。

2020年以降の販売好調の理由として、井村屋はコロナ禍での在宅時間の増加、買い物時間の短縮、健康志向の高まりなどを挙げています。

海外展開として、2019年にはマレーシアで現地生産を開始。ハラル認証を取得した原料を使用し、現地の嗜好に合わせた甘さ控えめの「AZUKI BAR」を販売しています。

あずきバーの歴史

あずきバーは、井村屋の創業者である井村和蔵の息子、二郎が開発を指示したことから始まりました。当時、家庭用冷蔵庫の普及によりアイス市場が拡大する一方で、大手メーカーが既に市場を席巻していました。そこで二郎は、自社の強みである小豆のノウハウを生かし、他社にはない新しい氷菓の開発を目指したのです。

開発当初は、小豆を均等に分散させることに苦労しましたが、試行錯誤の末、1973年にあずきバーが誕生しました。発売当初は1本30円と高価でしたが、その独特の味わいが受け、大ヒット商品となりました。その後も、消費者の好みに合わせて甘さなどを微調整していますが、基本的な製法は変わっていません。

コラボレーション

あずきバーは、様々な企業や地域とのコラボレーションも行っています。

2013年には、ラジオ番組とのコラボで「ゆずあずきバー」を販売。
2015年からは、岐阜県関市のふるさと納税の返礼品に採用。「硬さ」つながりで、日本刀を模した「日本刀アイス『あずきバー』」が制作されました。
2017年には、タカラトミーアーツからあずきバー専用のかき氷機が発売されました。

このように、あずきバーは、そのユニークな存在感で、様々な分野とのコラボレーションを実現しています。

あずきバーは、単なるアイスクリームではなく、日本の食文化を象徴する存在と言えるでしょう。その硬さ、シンプルな味わい、そして長い歴史は、多くの人々に愛され続けています。

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