お化け騒動

トムとジェリー『お化け騒動』：恐怖と笑いのドタバタ劇

1942年公開の『トムとジェリー』短編アニメーション『お化け騒動』（原題：Fraidy Cat）は、ハロウィンシーズンにもぴったりの、恐怖とユーモアが絶妙に絡み合った作品です。深夜、怪談番組を聴いていたトムは、身の毛もよだつ恐怖に慄きます。その様子を面白く見ていたジェリーは、トムを驚かせるいたずらを仕掛け始めます。

ジェリーは掃除機を巧みに操り、白いシーツをまとわせたまるで幽霊のような姿でトムを脅かします。幽霊の仕業だと信じ込んでいるトムは、恐怖のあまり逃げ惑います。しかし、やがていたずらのはずがジェリーだと気づいたトムは、いつものようにジェリーを追いかけ回します。

そこに、物音に気づいたお手伝いさんが登場します。白いネグリジェ姿で現れたお手伝いさんを、ジェリーに変装したと勘違いしたトムは、なんとお手伝いさんの尻に噛み付いてしまいます。当然、激怒したお手伝いさんにトムはお仕置きされてしまうのです。

一方、缶の中に隠れていたジェリーは、小麦粉まみれの自分の姿が鏡に映ったものを幽霊と勘違いし、大慌てで巣穴に逃げ込みます。

この作品では、トムのキャラクターが際立っています。怪談番組に怯える臆病な姿や、ジェリーへの激しい追いかけっこ、そしてお手伝いさんへのまさかの攻撃と、様々な表情を見せてくれます。ジェリーは、いたずら好きで、トムを巧みに操り、恐怖と笑いを誘います。そして、お手伝いさんは、予想外の登場と、トムへの痛快な仕返しで、作品にアクセントを加えています。

『お化け騒動』の見どころは、緻密なアニメーションと、テンポの良い演出です。トムとジェリーのコミカルな動き、そして、お化け騒動に巻き込まれるお手伝いさんのリアクションは、観る者を飽きさせません。さらに、ラジオから流れる怪談話や、効果音なども、恐怖感を高め、作品全体の雰囲気を盛り上げています。

作品タイトルの『Fraidy Cat』は「怖がりな猫」を意味し、怪談に怯えるトムの様子を表しています。また、トムの魂が9つに分かれて掃除機に吸い込まれそうになる描写は、「ネコに九生あり」という英語のことわざを基にしたユーモラスな表現です。

スタッフクレジットは、通常とは異なり、サブタイトルよりも先に表示されています。これは、当時のアニメーション制作における珍しい手法と言えるでしょう。

『お化け騒動』は、単純なトムとジェリーの追いかけっこだけでなく、恐怖、ユーモア、サスペンスが絶妙に混ざり合った、何度観ても楽しめる傑作です。彼らのコミカルな動きと、予想外の展開に、きっと笑いが止まらなくなるでしょう。 シリーズの中でも人気の高い作品の一つとして、多くの人々に愛され続けています。

もう一度検索