こねこのらくがき

こねこのらくがき

『こねこのらくがき』は、1957年5月13日に完成した東映動画の初となる短編アニメーション映画です。本作は全編モノクロで、約13分間の中に40,000枚の動画が使われたと言われています。アニメーションの神様と称される森やすじが主要アニメーターとして関わり、擬人化された猫やネズミたちが活躍するストーリーが魅力的です。

概要

このアニメーションは、壁にえんぴつで描いたラクガキが動き出し、そこから始まる物語が基本です。音声は音楽と効果音のみで構成されており、対話は存在しません。こうしたスタイルは、観る者に視覚的な楽しさを提供し、登場するキャラクターたちの愛くるしさやアニメーションのダイナミズムを存分に表現しています。この作品は日本初の長編アニメーション映画『白蛇伝』を制作する際の予行演習としても位置づけられています。また、後に同じキャラクターが登場するカラフルな作品『こねこのスタジオ』も制作されました。

ストーリー展開

物語は、壁にえんぴつで馬やカニ、バス、トラックなどを描くこねこから始まります。突然、描いたラクガキたちが動き出し、交通渋滞を引き起こします。そこで、こねこはおまわりさんを描き、混乱を収める様子が描かれます。しかし小さなネズミと大きなネズミがその様子を見て拍手する中、こねこはさらなるネズミを描きます。しかし、その拍手が原因で、小さなネズミは缶詰にしっぽを絡ませてしまい、慌てて土管に逃げ込んでしまいます。

次に、大きなクマのおじさんが出現します。こねこはその存在に気づかず、さらにネズミを描き続けますが、突然怒ったクマに首根っこをつかまれ、現場から追い出されます。その後、こねこは作画を消すよう促され、愉快な2匹のネズミたちはそれを見て大いに笑います。鉛筆が転がってくると、ネズミたちはその鉛筆を隠し、小さな穴に逃げ込みます。

ここから、こねこの奮闘が始まります。彼は動き出したラクガキの機関車に飛び乗り、ネズミたちと追いかけっこをすることになりますが、トラブルが続きます。最終的には、ネズミたちが描かれた集団でこねこを追い込んだり、またネズミたちが様々な手段を使ってこねこに迫ったりし、終盤はクライマックスに向かいます。

最後はこねこがネズミたちから無事に鉛筆を取り戻し、一緒に仲直りをする心温まるシーンで終わります。彼は壁をきれいにするために落書きを消し始め、ネズミたちもそれを見て笑顔を交わすのです。

制作チーム

この作品の制作には、木下秋夫が原作を担当し、企画には赤川孝一と山本早苗が関わりました。演出は薮下泰次、音楽は伊藤宣二が手掛けています。また、作画には多くの才能が集結し、映像のクオリティーを高く保っています。特に、大塚康生はこの作品を通じて視覚表現の基礎を学び、後に名を馳せることになります。

放送履歴

このアニメは、後に日本教育テレビ（現：テレビ朝日）の開局記念番組として放送され、さらに1964年の『ピーコック劇場』でも再放送されており、歴史的な価値を持つ作品と言えます。『こねこのらくがき』はただの短編アニメにとどまらず、日本のアニメーション文化の中で重要な役割を果たした作品です。

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