そらいいな

そらいいな株式会社は、長崎県五島列島においてドローンを活用した医療用医薬品の配送サービスを展開する企業です。この事業は、豊田通商が100%出資するグループ会社として、アメリカのドローン配送企業であるジップライン社から技術提供を受け、2021年4月に設立されました。2022年5月からは、実際にサービスを開始しています。

設立の背景

ジップライン社は、2011年8月にケラー・リナウドによって設立されたベンチャー企業です。同社は、2016年からルワンダ、2018年からはガーナで自社開発したドローンを用いて広域医療品配送事業を行ってきました。豊田通商は、2018年からジップライン社に出資および業務提携を開始し、医薬品輸入卸販売事業会社であるGokals-Laborex Limitedの医薬品をジップライン社が配送していました。

一方で、離島の物流は大きな課題となっており、特に長崎県五島市では、2018年度から「五島市ドローンi-Landプロジェクト」としてドローン物流の実証事業を進めていました。この状況に着目した豊田通商は、2021年3月にジップライン社との間で戦略業務提携契約を締結。そして、同年4月にそらいいな株式会社を設立するに至りました。ジップライン社が他社に技術提供を行うのは、この事例が初となります。

サービス開始と展開

2022年4月、五島市福江島に発着拠点を竣工し、同年5月からドローンによる医療用医薬品の定期配送サービスを開始しました。これは、日本初の試みです。同社は、五島市の医薬品卸会社から委託を受け、ジップライン社の技術と機体を用いて五島列島の医療機関や薬局へ医薬品を配送しています。2022年8月1日現在、試験飛行を含め150回以上の飛行を実施し、総飛行距離は5800kmを超えています。配送エリアは福江島から奈留島への定期配送の他、新上五島町への飛行試験も行われています。

ドローン運用方法

配送する医療品は、パラシュート付きの専用箱に梱包され、ドローンの胴体内部に格納されます。その後、ドローンはローンチャーと呼ばれる射出装置に設置され、翼とバッテリーが取り付けられます。バッテリーに記録されたフライトミッションに従い、ドローンは自立飛行を開始。ローンチャーによって射出された後、あらかじめ設定された半径約10mの空き地などの上空で荷物を投下します。

ドローンの巡航速度は約109km/h（時速68マイル）で、最大運用距離は約80km（50マイル）、積載量は約1.8kg（4ポンド）です。荷物を投下した後、ドローンはリカバリーシステムと呼ばれる着陸施設まで自律飛行し帰還します。リカバリーシステムは空中に張られたワイヤーを利用し、ドローンの尾翼のフックをワイヤーに引っ掛けて機体を回収する仕組みです。

現在、そらいいな株式会社のドローン運用は無人地帯上空の飛行（レベル3）に限定されています。また、劇薬指定の医薬品は「ドローンによる医薬品配送に関するガイドライン」により、配送が許可されていません。

関連情報

そらいいな株式会社の事業は、離島における医薬品配送の効率化と迅速化を実現し、地域医療の課題解決に貢献することが期待されています。今後、さらなるサービス拡充や技術開発が進められることが予想されます。

参考文献

CNET (2018年). “ドローンで医療用血液を輸送-米スタートアップZiplineの挑戦”. 2022年8月10日閲覧。
CNET (2022年). “五島の病院などに時速100キロ超で薬をドローン配送-日本初上陸の「Zipline」を現地取材”. 2022年8月10日閲覧。
豊田通商 (2021年). “日本市場でのZipline International Inc.との戦略業務提携～ドローン物流サービスの社会実装に向けて～”. 2022年8月10日閲覧。
豊田通商 (2022年). “長崎県五島列島で医療用医薬品のドローン配送事業を開始～離島間の長距離定期物流網の構築による社会課題解決への貢献を目指す～”. 2022年8月10日閲覧。
そらいいな株式会社 (2022年). “奈留島向け医療用医薬品の配送開始について”. 2022年8月10日閲覧。

関連項目

ドローン宅配便
* Zipline - 配達用ドローンの設計、製造、運用を行うアメリカの企業

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