ちんや

浅草の地で長年愛されてきたすき焼き専門店「ちんや」は、その歴史と伝統の味で知られています。一度は閉店の危機を乗り越え、現在は新たな場所で営業を続けています。

創業は1880年（明治13年）。現在の店舗があるエリアで料理屋として歩みを始めました。その屋号「ちんや」は、江戸時代に諸大名や豪商へ狆（ちん）などの愛玩動物を納め、獣医も兼ねていた「狆屋（ちんや）」と呼ばれたことに由来します。古くからの歴史を持つこの店は、1903年（明治36年）にすき焼きを専門とする店へと転換しました。現在の建物は1975年（昭和50年）に新築されたものです。

浅草一丁目にあった旧店舗は、建物の老朽化が進み、空調設備の改修も困難な状況でした。そこに新型コロナウイルスの感染拡大による客足の減少、そして後継者が見つからないという問題が重なり、苦渋の決断として2021年8月15日をもって閉店することとなりました。閉店に伴い、店舗のあった土地と建物は売却されました。

しかし、この歴史ある「ちんや」の暖簾が完全に途絶えることはありませんでした。株式会社ちんやから、レストラン運営などを手がけるWDIが「ちんや」のブランドを引き継ぐことを2021年8月13日に発表したのです。そして、旧店舗からわずかに離れた花川戸二丁目に新たな店舗を構え、2022年3月18日に再び営業を開始しました。再出発にあたっては、かつて店を支えていた旧店舗の店主やスタッフも運営メンバーに加わり、伝統の味とサービスを受け継いでいます。

現在の「ちんや」は、東京都台東区花川戸二丁目16番1号に位置しています。定休日は特に設けられていません。営業時間は、月曜日から金曜日が午前11時から午後3時までと、午後4時30分から午後9時30分までの二部制。土曜日、日曜日、祝日は午前11時30分から午後9時まで通しで営業しています。店舗と同ビル内には精肉売店もあり、こちらは午前10時30分から午後7時30分まで営業しています。店舗に駐車場はありません。

電車でのアクセスは非常に便利です。東武伊勢崎線（東武スカイツリーライン）または東京メトロ銀座線の浅草駅からは徒歩およそ2分。都営地下鉄浅草線の浅草駅からも徒歩およそ4分です。少し離れますが、首都圏新都市鉄道つくばエクスプレスの新御徒町駅からも徒歩およそ10分でアクセスできます。

「ちんや」は様々なメディアにも取り上げられています。2017年には企業の歴史を紹介する番組「Story 〜長寿企業の知恵〜」で特集され、2021年にはテレビ東京の「出没!アド街ック天国」で紹介されました（同番組には以前にも数回出演）。2022年にはBSテレ東の「タタムなんてもったいない！」でも取り上げられるなど、注目を集めています。

一度は時代の波にのまれかけながらも、ブランドが受け継がれ、新たな場所で再生した浅草のすき焼き「ちんや」。江戸時代から続く歴史と伝統、そして多くの人々に愛される味が、これからも浅草の地で守り伝えられていくことでしょう。

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