とちおとめ

とちおとめ

とちおとめは、栃木県で誕生したイチゴの品種で、1996年に開発されて以来、日本中でその名が広まりました。2021年現在、いちごの品種の中でも最も生産量が多いのがこのとちおとめです。名前には、栃木県のイメージを表現し、多くの人々に愛される存在となるようにという思いが込められています。

特徴

このイチゴは、円錐の形をした大きな果実を持ち、一般的に果形比は縦と横が約1.4対1の比率です。特に頂花房では赤道面が女峰に比べて太く、脇花房ではやや縦長となることが特徴です。また、糖度は9～10%と高めであり、酸度は0.7%と低いため、甘さが際立つ味わいを提供します。果肉は緻密で多汁であり、食味の質が高い、という評価を受けています。果実の赤色の着色も優れており、これはとよのかの課題を補う形で開発されたあまおうの由来ともなっています。

着花数は頂花房で約15花程度で、果実の平均的な重さは約15グラムですが、頂花房の果実は30グラムから40グラムになることもあります。促成栽培においては、1株あたりの可販果の収量が537グラムから626グラムに達し、平均重量も15グラムを超え、可販果率85%以上という高い数値を誇っています。

また、走出枝の発生は女峰と同程度ですが、地面から浮きやすいため発根はやや遅れがちです。苗や開花後の株においてはチップバーンやガク焼けといった生理的な障害が発生することがあるため、灌水や遮光などの防止策が必要とされています。

品種開発の経緯

イチゴの栽培は1950年代末から栃木県で本格的に行われており、1972年から1988年まで生産金額日本一を誇っていましたが、その後福岡県に抜かれることになります。この状況を打破するため、県独自の新品種を開発する必要が生じ、1989年に交配試験がスタートしました。

これまでの女峰は促成栽培に対応できるものの、栽培の後半で糖度が低下し、果実も小さくなることが欠点でした。そこで、女峰に代わる食味の優れた新品種が必要とされ、1990年には栃木11号という系統名が与えられました。この系統は1993年に栃の峰として品種登録されたものの、手間がかかるため普及には至りませんでした。

さらに開発が続き、1994年に「とちおとめ」と命名され、その後、1996年に正式に品種登録されます。生産が始まると、すぐに栃木県内のイチゴ栽培面積の半分以上がとちおとめで占められ、1999年には94%にも到達しました。

韓国への流出

興味深いことに、とちおとめは韓国にも無断で生産され、逆輸入されていた事例が確認されています。これは2001年以降に韓国からの輸入で判明しました。韓国では、他の日本の品種と組み合わせた新たな品種も登録され、韓国市場でも地位を確保しています。

その他の展開

最近では、2023年にとちおとめを使ったジュースが販売されるなど、その活用法も広がっています。このジュースは、果汁20%を使用し、規格外のイチゴを用いることで食品ロス削減にも寄与しています。

とちおとめは、その歴史と特徴から日本のイチゴ産業において特別な位置を占めており、多くの人に愛され続けています。

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