ヒュウガナツ

ヒュウガナツ：宮崎が誇る柑橘の逸品

ヒュウガナツ（日向夏、学名: Citrus tamurana）は、ミカン科ミカン属に分類される常緑低木の柑橘類です。その名の通り、宮崎県を原産地とする柑橘で、江戸時代、宮崎市で偶然発見されました。

歴史と起源

1820年、宮崎市で真方安太郎氏の邸内で発見されたヒュウガナツは、当初酸味が強く食用には適しませんでしたが、その後、栽培技術の向上により、現在では宮崎県のみならず、高知県、愛媛県、熊本県、静岡県伊豆半島、神奈川県西部などでも栽培されるようになりました。他地域では「小夏」「土佐小夏」「ニューサマーオレンジ」といった別名で流通しています。

特に宮崎県では、1992年から宮崎大学農学部の協力を得て、木原果樹会が種なし栽培の研究に取り組み、「種なし日向夏」の開発に成功するなど、品種改良にも力を入れています。

その名前の由来は、教育者であった田村利親氏に遡ります。1887年、田村氏は宮崎で栽培されていたこの柑橘類の優秀性を認め、「日向夏蜜柑」と命名しました。さらに、彼は日向夏の苗木を故郷の高知県にも送り、その栽培を広めるのに貢献しました。その功績を称え、柑橘研究の権威である田中長三郎氏によって、学名は Citrus Tamurana と命名されました。

特徴と風味

ヒュウガナツは、ユズ由来の在来品種と考えられていましたが、遺伝子解析の結果、タチバナが花粉親であることが判明しました（種子親は不明です）。6月頃に成熟し、温州みかんよりやや大きく、約300グラムの果実をつけます。

果皮は黄色く厚みがあり、果肉は酸味がありながら甘さは控えめ。独特の風味は、グレープフルーツやレモンにも似た爽やかさを持ちます。果皮の表面は温州みかんに比べて滑らかです。

他の柑橘類と異なる点は、白い内果皮（アルベド）も食べられることです。苦みや渋みがない、ふかふかとした食感が特徴です。外果皮を薄く剥いて、この白い部分を残して食べるのがおすすめです。

2005年の収穫量は5,386トン、2010年には5,714トンに達し、そのうち宮崎県が55%、高知県が28%を占めています。

変異種

枝変わりなどによる様々な変異種が存在します。代表的なものとしては、高知県で発見された「室戸小夏」（小型で無核）、静岡県で発見された「白鳥日向」（大型で種が少ない）、「宿毛小夏」（酸味が少なく成熟が早い）、「西内小夏」（種が少ない）、同じく静岡県で発見された「井原日向」（樹勢がやや開帳）、「松岡小夏」（果梗部放射条溝が多い）などがあります。

育種親としての利用

ヒュウガナツは、数多くの柑橘類の品種改良にも貢献しています。「阿波オレンジ」「ひめのつき」「KKM7号」「エクリーク118」「はるか」「カンキツ口之津41号」「はるひ」「璃の香」など、様々な品種の育成において、ヒュウガナツが交配親として用いられています。

食べ方

ヒュウガナツの食べ方は多様です。そのまま食べる（外果皮を剥いて）、ジュースにする、砂糖をかけて食べる、料理の具材（太巻き、餃子、レタス巻きなど）として使う、マーマレードにする、果実酒にするなど、様々な楽しみ方ができます。

その他

九州限定のジャイアントポッキーに「日向の夏みかん」フレーバーが存在するほか、宮崎駅前にヒュウガナツをかたどったポストが設置されるなど、地域を代表する柑橘として親しまれています。

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