わらの犬

『わらの犬』の詳細

概要

『わらの犬』（原題：Straw Dogs）は、1971年に公開されたアメリカ映画で、サム・ペキンパーが監督を務めました。この映画は、当時の特異な文化背景を反映した内容になっており、特に暴力の描写や葛藤の深さが支持されました。日本では1972年の春に公開されました。本作は、著名な西部劇『ワイルドバンチ』の監督として知られるペキンパーの初の現代劇として注目されました。

この映画の原作は、イギリスの作家ゴードン・M・ウィリアムズによる小説『トレンチャー農場の包囲』です。また、映画のタイトルは『老子』の言葉「天地不仁、以万物為芻狗」に由来しており、天地にとって人々は祭りに使われるわらの犬と同じように扱われることを示唆しています。

また、ペキンパーは脚本家としてノーベル文学賞を受賞したハロルド・ピンターに脚本を依頼しましたが、過激な内容への嫌悪感からピンターはこの仕事を辞退しました。この影響もあり、映画公開当時、復讐をテーマにした作品が多く制作され、評論家はこの現象を「わらの犬症候群」と名づけました。

ストーリー

物語は、数学者のデイヴィッド・サムナーとその妻エイミーが、都市の喧騒から離れ、彼女の故郷であるイギリスの田舎に移住するところから始まります。二人は平穏な生活を求めていますが、村の若者たちから嘲笑と嫌がらせを受ける毎日を送ることになります。デイヴィッドは内気で気弱な性格で、妻エイミーに宥められても自ら立ち向かうことができません。

そんな折、精神的な障害を持つヘンリーを家に匿うことが事態をさらに悪化させます。若者たちはヘンリーに対して暴力を振るおうとし、デイヴィッドとエイミーの安全が脅かされます。知人のスコット少佐が仲裁に入るものの、混乱の中で命を落とすことになります。この出来事がデイヴィッドの心に大きな影響を与え、彼は自己防衛のために暴力に手を染めることになります。物語は恐怖とともにデイヴィッドの内面を深く掘り下げ、彼がどのようにして暴力のループに巻き込まれていくかを描写します。

キャスト

本作では、ダスティン・ホフマンが主人公デイヴィッドを演じ、その演技は多くの評価を受けました。加えて、スーザン・ジョージが彼の妻エイミーを演じ、彼女の役柄も物語に重要な影響を与えています。

反響と評価

『わらの犬』は日本でも多くのファンを持ち、特に井筒和幸監督や脚本家の野沢尚は本作を高く評価しました。井筒監督はペキンパーを尊敬し、ダスティン・ホフマンの演技も称賛しています。野沢は邦画『砂の器』や洋画『ダーティハリー』と相対的にペキンパー作品を位置づけ、映画界におけるペキンパーの影響を改めて示しました。また、辻仁成が選ぶ映画ベスト3の一つに本作を挙げるなど、多くの映画人から愛されています。

『わらの犬』は、その内容やテーマが今日でも多くの人々に議論を呼んでおり、現代映画における重要な位置付けを持っています。その後の映画製作においても影響を与え続け、暴力や復讐についての作品に対する視点を深めるきっかけとなった作品と言えるでしょう。

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