アッシーくん

バブル時代の象徴的俗語：アッシーくん、メッシーくん、ミツグくん

高度経済成長期を経て、バブル景気に沸いた1980年代後半から1990年代初頭。この時代、独特の恋愛観を反映した俗語が生まれました。中でも代表的なのが「アッシーくん」「メッシーくん」「ミツグくん」です。これらの言葉は、女性にとって都合の良い男性を指し、現代の恋愛観を考える上で興味深い社会現象と言えます。

アッシーくん：女性専用のドライバー

「アッシーくん」とは、女性に自家用車で送り迎えをする男性のことです。語源は「足」から来ており、女性の足となって自由に使えるという意味合いを持っています。当時、東京都港区六本木周辺ではBMW 3シリーズ（E30）が多く見られたことから、「六本木カローラ」というニックネームも付けられました。アッシーくんは、自身の運転技術や高級車といった自己アピールを通して女性との関係を築こうとしますが、女性にとってはその利便性のみが目的である場合が多く、恋愛関係に発展することは稀でした。1990年の流行語大賞を受賞するなど、当時の社会現象を反映した言葉と言えるでしょう。

メッシーくん：奢り専門の男性

「メッシーくん」は、女性に食事をおごる男性を指します。「メシ」＝食事から生まれたこの言葉は、バブル景気の華やかな雰囲気と、男性の経済力を見せつける行動を反映しています。当時流行したイタリア料理を「イタ飯」、フランス料理を「フラ飯」と略す表現も用いられました。メッシーくんもまた、女性との交際において経済的な負担を厭わず、好意を伝えようとしますが、アッシーくんと同様に、真の恋愛関係に発展するケースは限られています。

ミツグくん：貢ぎ続ける男性

「ミツグくん」は、女性に物やお金を贈る男性のことです。「貢ぐ」という行為から生まれた言葉は、男性側の経済力と女性への執着を象徴しています。2000年代には「財布君」や「財布」というより直接的な表現も登場しました。ミツグくんの行動は、女性にとって経済的なメリットをもたらしますが、アッシーくんやメッシーくんと同様に、真の愛情や恋愛関係とは結びつかないことがほとんどでした。

ツナグくん：何でも屋さん

さらに、これらの言葉に加え、「ツナグくん」という表現も存在しました。これは、テレビやオーディオ機器などの配線、つまり、女性にとって難しい技術的な作業を代わりにやってくれる男性のことです。一人暮らしの女性にとって、頼りになる存在ではありますが、これもまた、恋愛感情とは別の、利便性に基づいた関係と言えるでしょう。

キープくん：恋人未満の男性

これらの男性を包括的に表す言葉として「キープくん」があります。これは、女性が複数の男性を「キープ」する際に用いられる表現で、「ボトルキープ」という当時の流行語から派生しました。キープくんは、本命の恋人候補とは別に、送迎や食事、プレゼントなどで女性に便宜を図る男性です。女性は彼らを必要に応じて利用し、本命と別れた後の新たな恋人候補とすることもありました。しかし、2000年頃からは、本命に絞る傾向が強まっていきました。

社会現象としての意義

アッシーくん、メッシーくん、ミツグくん、そしてキープくんといった言葉は、バブル景気特有の消費文化や、男女間の関係性を如実に表しています。男性の経済力への依存、女性の打算的な行動、そして恋愛における現実的な側面がこれらの言葉を通して浮き彫りになりました。これらの言葉は、現代においても、恋愛における経済的な側面や、男女間の利害関係を考える上で、重要な示唆を与えてくれると言えるでしょう。また、これらの言葉は、単なる俗語にとどまらず、当時の社会構造や価値観を反映した、一種の社会現象として捉えることができます。

現代社会との関連性

バブル崩壊後、これらの言葉の使用頻度は減少しましたが、現代社会においても、男女間の関係性における経済的な要素や、利便性を求める傾向は依然として存在します。例えば、デート費用を男性が負担する慣習や、便利なサービスを提供するアプリの普及などが、これらの言葉が示唆する問題意識と繋がる部分と言えるでしょう。現代の恋愛観を考える上で、これらの言葉は、過去と現在を繋ぐ重要なキーワードであり、社会の変化を反映する鏡と言えるでしょう。

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