アメリカンクラッカー

アメリカンクラッカー

アメリカンクラッカーは、その特徴的な「カチカチ」という音から「カチカチボール」とも称される玩具です。一般にアメリカで誕生したとされており、二つのボールを紐で繋ぎ、互いにぶつけ合わせることで連続的な音を発生させて遊びます。その名称は、同様に音を発するクラッカーに由来しています。

構造と基本的な遊び方

この玩具は、おおよそ20センチメートル程度の長さの紐の両端に、それぞれ直径3〜4センチメートルほどの硬質プラスチック製のボールが取り付けられています。紐の中央付近にはリングが付いており、このリングを中指と薬指でつまんで持ちます。

遊び方は、このリングを持った指を上下にリズミカルに動かすことで、ボールが互いに衝突し、「カチカチ」という音を立てるというものです。指の動かし方には独特のコツが必要で、始めたばかりの頃は連続して音を鳴らし続けることが難しいと感じるかもしれません。熟練すると、ボールを上下で正確にぶつけ続けることで、滑らかな円運動と途切れない連続音を生み出すことができるようになります。

日本での流行と短命なブーム

日本においては、1970年代初頭に一大ブームが巻き起こりました。具体的には1971年3月上旬、アサヒ玩具が「アメリカで大流行しているおもちゃ」として市場に投入したのがきっかけとなり、瞬く間にヒット商品となりました。しかし、このブームは驚くほど短命に終わります。

その主な原因は、玩具の安全性と騒音に対するクレームでした。遊んでいる最中にボールが紐から外れて周囲の人に当たり怪我をさせてしまう事故が発生したり、ボールがぶつかり合う「カチカチ」という音が非常に大きく響き、近隣から「うるさい」という苦情が相次いだためです。これらの問題により、発売からわずか1ヶ月程度でブームは急速に沈静化してしまいました。現在でも一部のメーカー（例えばパルボックスなど）から販売されており、根強い人気を持つ人もいます。

関連する作品や事柄

アメリカンクラッカーは、そのユニークな構造や音、あるいはブームの記憶から、様々な分野で引用されたり、モチーフとなったりしています。

漫画『つるピカハゲ丸』では、登場人物がこれに似た動きを見せるシーンで再現されたことがあります。また、人気漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の第二部「戦闘潮流」では、主人公ジョセフ・ジョースターが「クラッカーヴォレイ」と呼ばれる鉄製のアメリカンクラッカーを特殊な波紋攻撃に用いる武器として使用し、印象的な活躍を見せました。

音楽の世界でも登場しています。1971年にはモンタルト・トリオがザ・ワッキー・クラッカーズ（The Wacky Crackers）名義で、アメリカンクラッカーを題材にした楽曲「恋はカチカチ（Crazy Balls）」を発表しました。日本のバンドであるキリンジも同名の曲を2006年発売のアルバム『DODECAGON』に収録しており、さらに2023年には元ボーカルの堀込泰行が自身のEP『星屑たち』でこの曲をセルフカバーしています。

さらに、サッカーの戦術用語である「ティキ・タカ」もアメリカンクラッカーと関連があります。スペイン発祥とされるこの戦術は、短い正確なパスを素早く連続して繋ぎながら攻め上がるスタイルを指しますが、その名称である「ティキ・タカ」は、スペイン語でアメリカンクラッカーが鳴る「カチカチ」という擬音語に由来しています。小気味よくパスが繋がっていく様子を、ボールが規則正しくぶつかり合う音になぞらえて名付けられたと言われています。

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