アンセム

アンセム（Anthem）とは

アンセムとは、主に特定の集団や状況を祝う音楽の一種であり、国歌や応援歌として広く認識されています。元々は聖公会の教会音楽にルーツがあり、聖歌や交唱賛美歌のひとつとして発展しました。現代では、英語の歌詞に基づく賛歌として、特定の集団やイベントを祝う目的で用いられています。

語源について

この言葉は、ギリシャ語の「αντιφωνα（antiphōna）」に由来し、そこからラテン語の「antefana」、さらにはサクソン語の「antefn」へと変化を遂げてきました。このように、音楽用語としてのアンセムは、古い歴史を持つと同時に、文化的背景も反映されています。

教会音楽におけるアンセム

アンセムはもともと、イングランド国教会の礼拝において重要な役割を果たしてきました。特に朝と夕方の祈りの中で、第3の特祷の後に歌われることが定められています。その歌詞は、聖書や儀式文書から選ばれることが一般的であり、曲調は賛美歌よりもはるかに複雑で多様性に富んでいます。これに対し、イングランド国教会のアンセムは、合唱隊のために作られ、特に訓練された声楽家によって歌われることが特徴です。英語で歌詞が書かれることが基本になっており、カトリック教会における「votive antiphon」の代用としての役割も果たしてきました。エリザベス朝時代（1558年 - 1603年）には、ウィリアム・バードやトマス・タリスといった著名な作曲家が数多くのアンセムを作曲しましたが、特に1662年に「アンセム」という用語が祈祷書に初めて登場したことが重要視されています。

音楽理論とスタイルの変遷

音楽理論において、初期のアンセムは聴衆が歌詞を明確に聞き取れるように、単純でホモフォニー（同音構造）であることが顕著でした。16世紀の後半になると、独唱と合唱が交互に演奏される「ヴァース・アンセム」が登場し、王政復古期にはこのスタイルが主流となりました。ヘンリー・パーセルやジョン・ブロウは、チャペル・ロイヤルのために管弦楽伴奏付きの作品を作曲し、19世紀にはサミュエル・セバスチャン・ウェズリーの影響を受けた数楽章から成るアンセムも現れました。これに続き、チャールズ・ヴィリアーズ・スタンフォードは、より統一された作品作りを目指し、交響曲の技法を活用して新たなスタイルを確立しました。

現代のアンセムとその意義

今日の「アンセム」という用語は、国歌やスポーツ応援歌など、特定の集団を祝うための音楽全般に広がっています。ポップミュージックの中でも、クイーンの「伝説のチャンピオン」やフリートウッド・マックの「牙（タスク）」といった楽曲がスポーツの盛り上げに寄与しています。また、特定の音楽ジャンルやアーティストの代表曲として使われることもあります。さらに、音楽の感動を表す際には「anthemic」という新しい形容詞が使われるようになり、アンセムの重要性はますます高まっています。

このように、アンセムはそのルーツから現代の音楽シーンに至るまで、多様な形で進化を遂げ、特定の集団や感情を表現する重要な役割を果たしています。

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