イギリス国籍

イギリスの国籍制度：複雑な歴史と多様な区分

イギリスの国籍は、1981年イギリス国籍法で規定されており、その歴史的経緯から、複数の区分が存在し、それぞれに権利や義務が異なります。単純な「イギリス人」という枠組みでは理解できない複雑さを持ち、現代においてもその制度は進化し続けています。本稿では、主要な国籍区分について、その定義と権利、歴史的背景を分かりやすく解説します。

イギリス国籍の区分

イギリスの国籍区分は大きく分けて以下の種類があります。それぞれの区分によって、イギリスにおける居住権、就労権、投票権など、さまざまな権利が異なってきます。また、EU離脱後、EU域内での権利にも影響が出ています。

1. イギリス市民 (British Citizen)

イギリス市民は、完全なイギリス市民権を有し、居住、就労、投票など、イギリス国内で全ての権利を享受できます。

取得条件: 1983年以前にイギリス諸島で生まれた者、または1983年以降にイギリス諸島で生まれ、片親がイギリス市民またはイギリス属領市民である者、イギリス本国または植民地で永住権を有する者、帰化した者などが該当します。
権利: 完全なイギリス市民権を有し、あらゆる権利を享受できます。
備考: 外国籍保有者は、一定期間の居住要件を満たした上で帰化によってイギリス市民になることができます。

2. イギリス海外市民 (British Overseas Citizen)

イギリス海外市民は、イギリス市民権を有していません。EU国民とはみなされず、居住や就労に制限があり、入国審査も必要です。

取得条件: 主に香港とのつながりを持つ者が該当します。歴史的な経緯から、香港返還（1997年）以前の住民に付与された国籍区分です。
権利: イギリス市民権を有していないため、イギリス国内での権利は制限されます。
備考: 香港返還以降は、新たに付与されることはありません。

3. イギリス臣民 (British Subject)

イギリス臣民は、主に旧イギリス領インドやアイルランド共和国の出身者などに付与された国籍区分です。現在は、新たに付与されることはなく、親から子へ継承されることもありません。

取得条件: 歴史的な理由により、旧植民地出身者などに付与されました。
権利: イギリス市民権を有していないため、イギリス国内での権利は制限されます。
備考: イギリス市民権を持たず、EU国民ともみなされません。

4. イギリス保護国出身者 (British Protected Person)

イギリス保護国出身者は、イギリス市民権を有しておらず、居住や就労に制限があります。

取得条件: 歴史的な経緯から、イギリスの保護領出身者などに付与されました。
権利: イギリス市民権を有していないため、イギリス国内での権利は制限されます。
備考: EU国民ともみなされません。

5. イギリス国民（海外）(British National (Overseas))

イギリス国民（海外）は、香港返還前に香港の住民権を持っていた者が持つ国籍区分です。

取得条件: 香港返還前に香港の住民権を持っていた者。
権利: イギリス市民権を有しておらず、居住や就労に制限があります。
備考: 香港返還以降は、新たに付与されることはありません。ただし、「イギリス国民（海外）ビザ」を取得し、一定期間の居住を経て永住権の申請が可能です。

6. イギリス海外領土市民 (British Overseas Territories Citizen)

イギリス海外領土市民は、イギリス在外公館からの領事支援を受けることができますが、イギリス市民権は有していません。

取得条件: イギリス海外領土とのつながりを持つ者。出生時期や両親の国籍など、様々な条件があります。
権利: イギリス市民権を有していないため、イギリス国内での権利は制限されます。
備考: 居住、就労、入国審査などに制限があります。

まとめ

イギリスの国籍制度は、複雑で多様な区分が存在します。それぞれの区分によって権利や義務が大きく異なるため、自身の状況を正確に理解することが重要です。本稿が、イギリスの国籍制度を理解する上で少しでもお役に立てれば幸いです。

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