ウェルドック

ウェルドックの概要

ウェルドック（well dock）は、主に軍艦や揚陸艦の内部に設けられた乾ドックのことを指します。このシステムは、上陸用舟艇を安全に格納し、迅速に発進できる機能を有しており、特に水陸両用作戦を行う際に重要な役割を果たします。

揚陸艦・輸送艦への設置

従来、上陸用舟艇はダビットに装載されるか、陽甲板に搭載してデリックやクレーンを使用して揚降されてきました。しかし、日本の大日本帝国陸軍は艦内に舟艇の格納庫を設けた特殊な船を建造し、帆船の後方扉を開けて舟艇を進水させる方式を採用しました。この技術がさらに進化し、ドック型揚陸艦においてウェルドックが導入されました。

このウェルドックを使うことで、艦とドック内の舟艇との間で物資や人員の移送が可能となり、ドックに水を注入することによって艦の船尾を下げ、舟艇を海に進水させることができます。この過程では、ドックの水深が最低でも2メートル程度必要です。これを確保するために、ウェルドックを持つ揚陸艦は通常、艦尾に注排水が可能なバラストタンクを設置しています。

この役割を果たすため、戦車揚陸艦よりもはるかに大容量のバラストタンクやポンプが必要となり、例えば旧式のLPD（揚陸艦）では約6,000トンのバラスト水を使用することがあります。一方で、LCAC（極端に浮力のある上陸用艦艇）を利用する場合、ドックの底面を海面と同じ高さに調整するだけで済むため、バラストタンクやポンプの能力はそれほど高くなくても問題ありません。

運用する舟艇に応じて、ドックの寸法は大きく変わります。LCAC-1級を4隻搭載するホイッドビー・アイランド級では、長さ134.1メートル、幅15.2メートルが必要ですが、小型の機動揚陸艇2隻を搭載するサン・ジョルジョ級では、長さ20.5メートル、幅7メートルに収まる設計となっています。

ドックの構造と機能

ウェルドックの船尾には、使用しないときに閉じるための扉（スターン・ゲート）が設置されています。これにはさまざまなタイプがあり、スライド式や下方展開式、上下展開式などが存在します。また、LCACのように保針性が低い舟艇を運ぶ場合、艦尾には進入を容易にするための専用灯火を装備する必要があります。

哨戒艦・巡視船への設置

哨戒艦や巡視船においても、迅速な搭載艇の降下および揚収を行うためにドックやランプが設けられています。これによって、低速航行や停船時に短時間で舟艇の操作が可能になりますが、高速航行や波浪にさらされた低速時では、運用が難しいという課題も存在します。

ウェルドックは、特に軍事において水陸両用作戦を迅速に行うための重要な装置であり、様々な技術や設計が融合した結果、今日の揚陸艦の進化を支えています。今後も新たな技術とともに、その重要性はさらに増していくことでしょう。

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