ウサギコウモリ

ウサギコウモリ：ヨーロッパの夜空を舞う、大きな耳を持つコウモリ

ウサギコウモリ(Plecotus auritus)は、その名の通り、ウサギのような大きな耳を持つコウモリです。ヒナコウモリ科に属し、ヨーロッパを主な生息域としています。以前は日本にも生息すると考えられ、亜種ニホンウサギコウモリとして分類されていましたが、2006年のミトコンドリアDNA解析による分子系統推定の結果、ヨーロッパに生息するウサギコウモリと日本産コウモリは別種であるという説が提唱されました。現在では、狭義のウサギコウモリはヨーロッパ地域にのみ分布するとされています。

形態と生態

ウサギコウモリは、前腕長4～4.2cm、頭胴長4.5～4.8cm、尾長4.1～4.6cm、体重5～13gと比較的小型のコウモリです。最大の特徴はその耳の大きさで、3.3～3.9cmにも及びます。この大きな耳は、他のコウモリと容易に区別できる特徴となっています。飛行速度は他のコウモリと比べて遅く、森林や低木地、洞窟などを生息場所としています。ねぐらとしては、樹洞や洞窟、そして人間の作った建物や人工的なコウモリ箱なども利用します。樹洞を利用する場合は、地面に近い場所を選ぶ傾向があるようです。

食性は主に飛翔性の昆虫、特にガです。しかし、葉上や樹皮にいる昆虫も捕食します。昼間に活動している姿が観察されることもあり、視覚に頼って行動することが知られています。獲物を探す際にはエコロケーションも使用しますが、他のコウモリに比べると、視覚への依存度が高いようです。エコロケーションの周波数は27～56kHzで、ピークは45kHz、持続時間は約2.5秒です。

人間との関係と保全状況

2020年時点では、ウサギコウモリは絶滅の危機に瀕しているとは考えられていません。しかし、いくつかの脅威が懸念されています。森林伐採による営巣木の減少、建物改修工事によるねぐらの破壊や消失、農業や林業による餌となる昆虫の減少、そして交通事故などによる死亡などが、個体数減少に繋がる可能性があります。

分布

ウサギコウモリの分布域は、北緯63～64度以南のヨーロッパ地域に広がっています。アイルランドやスペインからウラル山脈にかけて生息しており、模式標本の産地はスウェーデンです。

結論

ウサギコウモリは、その独特の大きな耳と生態で知られる、ヨーロッパを代表するコウモリの一種です。近年、遺伝子解析による分類の見直しが行われ、その分布や種としての認識に変化が見られました。今後も、生息環境の変化による影響に注意深く監視していく必要があります。彼らの未来を守るためには、森林保護や生息地の保全、そして人間活動による影響の低減が不可欠です。

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