エンゲル係数

エンゲル係数とは

エンゲル係数（Engel's coefficient）は、家計の総消費支出の中で食費が占める割合を示す指標です。この概念は、19世紀のドイツの社会統計学者エルンスト・エンゲルによって提唱され、1857年に彼が発表した論文で広まりました。エンゲル係数は、次の式によって計算されます。

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エンゲル係数 = (食料費 ÷ 消費支出) × 100
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一般に、所得が少ない世帯ほど、生活維持のために食費に大きな割合を充てる傾向があるため、エンゲル係数は高くなります。反対に、所得が増えることで、生活必需品以外の支出（住居、教育、娯楽など）が増え、食費の割合が減少するため、エンゲル係数は低下します。この現象は「エンゲルの法則」として知られています。

エンゲルの法則の意義

エンゲルの法則は、個人や家庭の生活水準、または消費行動の変化を把握するための重要な指標となっています。これにより、地域や国ごとの経済発展や貧困の程度を測ることが可能です。特に、収入が増加することによって、食生活の向上が期待できるため、エンゲル係数は経済活動の指標としても評価されています。

エンゲル係数の有用性と限界

エンゲル係数は生活水準の表れとされますが、必ずしも全ての社会集団でその有用性が保証されるわけではありません。たとえば、世帯の人数や生産年齢人口の比率、物価設定、生活習慣が異なる場合、エンゲル係数の単純比較は適切とは言えません。たとえば、日本の経済学者飯田泰之は、最も貧しい20%の層が食費に充てる割合が約25%である一方で、最も裕福な20%は約22%であるとしています。このことは、中間層が相対的に高い食費を支出していることを示唆しています。

また、岐阜大学の教授である大藪千穂は、エンゲル係数の上昇が常に貧困の指標であるとは限らず、高齢化や食文化の変化など、多様な要因が影響を及ぼすと指摘しています。さらに、ニッセイ基礎研究所の櫨浩一は、共働き世帯の増加が世帯所得を押し上げているため、エンゲル係数の増加は一概に悪化を示すわけではないと述べています。

日本におけるエンゲル係数の変遷

日本では、第二次世界大戦前のエンゲル係数は都市労働者の場合、約30%台を維持していましたが、戦後は約60%前後に急上昇しました。特に2020年のエンゲル係数はバブル崩壊以降、最高の数値を記録しました。日本政府の総務省統計局が提供する「家計調査年報」によるデータが、この傾向を裏付けています。

世界のエンゲル係数

世界的に見てもエンゲル係数は、国の経済状況や文化的背景によって異麻なデータを示しています。日本の統計局が発表した「世界の統計」などを参考にすることで、各国の生活水準や貧困層の規模を理解する手助けとなるでしょう。エンゲル係数は、家計の実態を知る重要な指標であり、経済学や社会学の研究においても興味深いテーマがあります。

関連項目

エンゲル係数に基づく類似の概念として、エンジェル係数やシュワーベの法則などがあります。これらは、エンゲル係数を発展させた考え方で、支出行動や生活水準についてより深く理解するための手段となっています。

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