オーストラリア戦略政策研究所

オーストラリア戦略政策研究所（ASPI）について

オーストラリア戦略政策研究所（ASPI）は、オーストラリアのキャンベラを拠点とする防衛戦略政策に特化したシンクタンクであり、2001年に設立されました。設立の背景には、国民の戦略的理解を深めるための調査と分析を提供するという目的があります。ASPIは、オーストラリア国防省からの資金のほか、アメリカ合衆国国務省や民間軍事会社などからも財政支援を受けています。

設立の歴史

ASPIは、元首相のジョン・ハワードによって2001年に設立され、正式な発足は同年の3月に行われました。初代所長にはヒュー・ホワイトが任命され、彼の下で研究や政策提言が進められました。彼は戦略・情報担当副長官を歴任しており、その経験を生かしてASPIの基盤を固めました。ホワイトの後、ピーター・アビゲイルがエグゼクティブ・ディレクターに就任しました。アビゲイルのリーダーシップの下でもASPIは成長を続け、特に戦略的問題における重要な声として認識されています。

重要なレポート

2020年に発表された「UYGHURS FOR SALE」レポートは、少数民族ウイグル人に対する強制労働の問題を扱い、世界の多くの企業がその影響を受けていることを指摘しました。この報告は、国際的なサプライチェーンにおける倫理的リスクの意識を高め、多くの海外企業が中国の供給業者との取引を見直すきっかけとなりました。この問題は、中国政府とASPIの間での緊張を引き起こす要因ともなり、対抗措置や不買運動が発生しました。

現在の管理体制

2012年には、スティーブン・スミス国防大臣が新しい事務局長としてピーター・ジェニングスを任命しました。ジェニングスは、防衛と国家安全保障の専門家としての経歴を持ち、彼のもとでASPIは活動の幅を広げています。

資金調達の仕組み

ASPIは設立当初より、国内外の政府機関や民間企業から財政支援を受けています。資金源には、オーストラリア国防省からのスポンサーシップ、委託業務、また企業からの協賛が含まれていますが、その割合は年々変動しており、特に最近では他の政府機関や民間企業からの支援が増加しています。特に、防衛関連企業からも資金提供を受けており、国際的な防衛問題に対する分析が強化されています。

出版物と情報発信

ASPIは「戦略」「戦略的洞察」「特別報告書」の3種類のレポートを発行し、日々の分析や解説を行う「The Strategist」も運営しています。このプラットフォームは、防衛・戦略に関するディスカッションを促進することを目的としています。

評価と批判

ASPIはオーストラリアにおける重要な国家安全保障政策のシンクタンクとして認識されていますが、その活動には賛否が分かれています。具体的には、政治家の間や国際的な立場からの批評があり、特に中国に関する報告や分析が議論を引き起こしています。しかし、その研究と政策提言がオーストラリアの防衛および戦略ポリシーに与える影響は無視できないものとなっています。

このように、ASPIはオーストラリアの防衛政策に関わる多くの側面に影響を与えているシンクタンクであり、今後の国際情勢においても重要な役割を果たすことが期待されています。

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