オーラルフレイル

オーラルフレイル

オーラルフレイル（oral frailty）とは、高齢者における口腔機能の軽微な衰えを指し、これは全身的な機能低下へと繋がる可能性があることを示されています。この概念は、東京大学高齢社会総合研究機構の辻哲夫教授と飯島勝矢教授によって提唱され、フレイルが進行する前の段階であるプレフレイルに分類されます。口から食べ物をこぼしたり、食べ物をうまく飲み込めなかったり、滑舌が悪くなるといった症状が見られることが多く、これを放置すると、全身的な健康状態が悪化する恐れがあります。

背景

オーラルフレイルの重要性が認識されるようになったのは2013年のことです。厚生労働省の事業にて、フレイル予防における口腔機能の維持が強調され、医療や歯科分野以外からも関心が持たれるようになりました。これに基づくシステマティックレビューが進行し、口腔機能の衰えが全身的な健康に与える影響が証明されてきました。

日本では、オーラルフレイルに対する啓発活動が始まり、口腔の健康を守ることが高齢者の生活の質を保つために欠かせないことが広く認識されつつあります。また、オーラルフレイルの明確な定義はまだ確立されていませんが、加齢に伴い口腔環境や機能が変化すると同時に、社会的、精神的、そして身体的な脆弱さが重なっている状況があるとされます。

状態

健康な状態から虚弱に至る流れとして、社会的・心理的なフレイル期、栄養に関するフレイル期、身体的なフレイル期と進展していきます。初期の段階では、生活範囲や活動量の減少から口腔への意識が低下し、食事に対する興味が失われます。これにより栄養フレイルが進み、さらなる機能低下を招く原因となります。

興味深いことに、オーラルフレイルの状態は本人には自覚されにくく、早期の発見が難しいとされています。そのため、周囲の人々が知識を持ち、チェックすることが求められています。

早期発見と対策

この概念を広めるために、飯島教授らは市民が簡単に自己評価できる方法を開発しました。その一環として、改定口腔アセスメントガイド（ROAG）が歯科医療関係者以外でも使えるスクリーニング方法として紹介されています。フレイルチェックも普及しており、市民が認定された「フレイルサポーター」として評価を行う取り組みが進められています。

検査内容には、口腔機能の評価を行うための簡単な質問や、実際に筋肉を触って評価する咬筋触診、発音の速度を測るオーラルディアドコキネシス検査などが含まれています。これらの検査を通じて、オーラルフレイルの兆候を見逃さないことが重要です。

加速因子と予防法

オーラルフレイルの進行には、薬剤や認知症が関与していることが指摘されています。特に、抗うつ剤や抗不安薬は口腔乾燥を引き起こし、口腔の健康に影響を及ぼします。また、認知症の進行に伴い、社会的活動が制限されることで、口腔機能が低下することもあります。

オーラルフレイルの予防には、食事の際にしっかりと噛むことや、積極的に会話をすることが推奨されます。さらに、定期的に歯科検診を受けることで、口腔の健康を維持することが健康寿命の延伸に繋がると考えられています。特に、小児期からの口腔機能の向上が高齢者におけるオーラルフレイルの予防に寄与することが指摘されています。

まとめ

オーラルフレイルは高齢者にとって非常に重要な健康指標であり、周囲が注意深く観察し、早期発見に努めることが求められます。適切な評価を受け、口腔の健康状態を整えることで、食事の質や生活の質を向上させ、全身的な健康を維持するための対策が不可欠です。

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