クアオルト

クアオルト（Kurort）とは

クアオルトとは、ドイツ語で「療養地」を意味する言葉です。具体的には、ドイツ語の「クア（Kur）」、つまり「治療・療養、保養のための滞在」と、「オルト（Ort）」、「場所・地域」という言葉が組み合わさってできています。

ドイツでは、「クアオルトの概念規定」という基準に基づいて、各連邦州が州法を制定し、認定された特別な地域を指します。これらの地域は、原則として自治体ですが、一部特別な企業体も含まれます。クアオルトとして認定されるためには、次の4つの療養要因が必須であり、これらの要因に基づいて医療保険が適用されます。州の認定は国が認定したことになります。

クアオルトの4つの療養要因

クアオルトの重要な要素として、以下の4つが挙げられます。

1. 土壌: 温泉や泥、蒸気など、土壌に由来する自然の恵み
2. 気候: 太陽光線や清浄な空気など、特定の気候条件
3. 海: 海水、海風、海の泥など、海に由来する資源
4. クナイプ式: 水療法、運動療法、食事療法、植物療法、秩序療法を組み合わせた自然療法

これらの療養要因は、症状に応じて選択され、専門医の指導のもとで治療に用いられます。治療は入院または通院の形で行われ、最長で3週間の滞在が可能です。

ドイツにおけるクアオルトの現状

1990年代後半の医療制度改革により、治療としてのクアオルトの利用は制限されました。現在では、治療目的の利用者は全体の1～2割に減少し、医科学的な根拠に基づいた健康づくりを目的とした保養客が8～9割を占めるようになっています。そのため、現代のクアオルトは、療養地というよりも健康保養地としての性格が強まっています。

2015年のドイツにおけるクアオルトの利用状況は以下の通りです。

宿泊数: 117,872,581泊
滞在客数: 24,284,073人
平均宿泊日数: 4.70泊

日本におけるクアオルトの普及

日本では、ドイツとは医療制度が異なるため、ドイツの制度をそのまま導入することは困難です。そのため、日本の社会制度や風土、国民性に合わせた日本型のクアオルトが、地方自治体や企業によって健康づくりとして推進されています。

日本におけるクアオルトの取り組みは、1971年に由布院温泉（現在の大分県由布市）の関係者が南ドイツのクアオルト、バーデンヴァイラーのまちづくりに感銘を受けたことがきっかけでした。彼らは帰国後、環境や景観を整え、温泉を利用した運動施設「クアージュゆふいん」を建設するなど、地域住民の健康づくりに貢献しています。

日本クアオルト協議会

旧湯布院町と交流があった山形県上山市は、2008年からドイツの「気候性地形療法」を活用した日本型クアオルトを目指しています。2011年には、由布市、上山市、和歌山県田辺市が「温泉クアオルト研究会」を組織し、ノウハウを共有しながら研究を進めました。その後、新潟県妙高市、石川県珠洲市などが加わり、2014年に「日本クアオルト協議会」として改組されました。2017年には9自治体が参加し、日本型クアオルトの品質向上のために、独自の指標を策定しています。

日本クアオルト研究機構

2015年には、クアオルトを研究する学者や医師らが中心となり、「日本クアオルト研究機構」が設立されました。この機構は、日本で唯一のクアオルト総合研究機関として、地域住民の健康増進や、日本型クアオルトを目指す自治体の研究を支援しています。

日本クアオルト研究所

株式会社・日本クアオルト研究所では、日本型クアオルトを推進するための人材育成や、気候性地形療法のコース設定など、実務的な事業を通じて自治体や企業の健康経営をサポートしています。

企業では、生命保険業界などが社員の健康増進を目的としてクアオルトを活用する事例が増えています。

国内で取り組む代表的な地域

山形県上山市では、ミュンヘン大学がアジアで初めて認定した気候性地形療法のコースが提供されており、専任ガイドによるウォーキングプログラムが人気を集めています。

同様のプログラムは、以下の地域でも実施されています。

青森県青森市
秋田県三種町
山形県上山市

など

関連情報

関連書籍:
小関信行／アンゲラ・シュー（著）『クアオルト（Kurort）入門／気候療法・気候性地形療法入門～ドイツから学ぶ温泉地再生のまちづくり～』
関連項目:
気候性地形療法
上山温泉
湯治

外部リンク

日本クアオルト研究機構
日本クアオルト協議会
日本クアオルト研究所
かみのやま温泉-クアオルト

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