グレア

グレア（Glare）とは

グレアとは、目に過剰な光が入り込み、不快感や視覚的な障害を引き起こす現象のことです。日本語では眩輝（げんき）や眩惑（げんわく）とも呼ばれます。グレアが発生するかどうかは、光源の明るさ、周辺環境とのコントラスト、視線の方向、個人の生理的な状態など、様々な要因によって決まります。

特に高齢者はグレアを感じやすく、回復にも時間がかかる傾向があります。グレアは、単なる不快感だけでなく、目の障害や事故の原因にもなり得るため、照明設計においてはグレアの防止が非常に重要です。国や地域によっては、グレア防止のための法規制も存在します。

グレアは光害と共通する側面もありますが、光害が公共性の問題として捉えられるのに対し、グレアはより工学的な問題として扱われます。

グレアの分類

グレアは、原因や程度によって以下の種類に分類されます。

不能グレア (Blinding glare)：極端に高い輝度やコントラストにより、網膜が順応できなくなる状態。視界の把握がほぼ不可能になります。
減能グレア (Disability glare)：不能グレアよりは軽度ですが、眼球内で光が散乱し、視界の把握が困難になります。
不快グレア (Discomfort glare)：目の機能自体は損なわれませんが、眩しさによって心理的な不快感が生じます。長時間の不快グレアは、目の痛みやストレス、頭痛などを引き起こすことがあります。

さらに、光源と観察者の関係によって、以下のようにも分類されます。

直接グレア：太陽や車のライトなど、高輝度光源を直接見ることによって生じるグレア。
間接グレア：光沢のある面に反射した光源を見ることで生じるグレア。鏡やディスプレイへの映り込みなどが該当します。
反射グレア：机や紙などの表面で反射した光によって生じるグレア。読書や書き物中に白い紙面からの反射光が目に入る場合などです。

グレアが生じる状況

グレアは、以下の要素が組み合わさることで発生しやすくなります。

光源自体の輝度が高い
光源と背景の輝度差が大きい
光源が視線に近い
視野に占める光源の立体角が大きい

具体的には、以下のような状況でグレアが発生しやすくなります。

ディスプレイの反射：CRTディスプレイの表面は反射しやすく、蛍光灯などの光が映り込むことで間接グレアが発生します。また、ディスプレイ自体の輝度が高すぎる場合や、暗い室内で使用すると、背景との輝度差が大きくなり、直接グレアが発生します。
自動車のヘッドランプ：夜間に自動車のヘッドランプを直接向けられると、瞬間的に不能グレアが生じることがあります。特に、目が暗順応している状態では影響を受けやすくなります。
夜間のスポーツ照明：夜間のスタジアムでは、高輝度の照明が使用されるため、直接グレアが生じやすくなります。これは、観客だけでなく、選手のパフォーマンスにも影響を与える可能性があります。

グレアの評価方法

グレアを客観的に評価する方法としては、以下のようなものがあります。

BCD (Borderline between Comfort and Discomfort)：快適と不快の境界となる光源輝度と背景輝度の値を測定します。
DGI (Daylight Glare Index)法：背景光の輝度、光源の輝度、光源が視野に占める立体角の3要素を用いてグレアを評価します。
グレアインデックス法：DGI法を修正したもので、個々の光源のグレアコンスタントを求め、全体のグレアの程度を表すGIを算出します。
VCP (Visual Comfort Probability) 法：どれだけの人が快適と感じるかを指標として用い、不快グレアの程度を評価します。通常、VCPが70%を超えるように照明を設計します。
UGR (Unified Glare Rating)法：照明器具の輝度、サイズ、位置、背景の輝度を総合的に評価する方法で、現在のグレア評価の主流となっています。ISO規格にも採用されています。

グレアの規制

グレアによる悪影響を防ぐため、各国で基準が設けられています。特に、屋内照明と道路照明に対する規制が多く、オフィスワーカーの健康や交通事故の防止を目的としています。

日本では、厚生労働省がVDT作業者のためのガイドラインを定めており、ディスプレイの位置調整や反射防止型ディスプレイの使用、グレア防止用照明器具の使用などを推奨しています。

グレアを防ぐ技術

グレアを防止するため、様々な技術が用いられています。

室内照明：作業者の目に直接光が入らないように照明を配置したり、間接照明を使用したりします。また、ディスプレイを用いた作業では、照明器具の映り込みを防ぐように配慮します。
ディスプレイ：ノングレア加工を施したり、アンチグレアフィルムを装着したりすることで、反射を抑えます。また、画面の輝度を適切に調整することも重要です。
LED：拡散発光させる、広指向性LEDの開発等、照明器具と周辺との輝度差をより緩やかにするといった工夫がなされています。
自動車・二輪車：ヘッドライトの光軸や色温度を規制したり、光軸調整機能を設けたりすることで、対向車や歩行者への眩しさを軽減します。
* サングラス：偏光レンズや遮光レンズを使用することで、グレアをカットし、視覚を保護します。

グレアは、私たちの生活環境において避けて通れない問題です。グレアの種類や発生原因を理解し、適切な対策を講じることで、より快適で安全な環境を実現することができます。

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