ケラ

ケラ（螻蛄）とは

ケラは、バッタ目（直翅目）・キリギリス亜目・コオロギ上科・ケラ科に分類される昆虫の総称です。コオロギ類の中でも特に地中での生活に適応しており、地中にトンネルを掘って生活します。日本にはケラの一種である Gryllotalpa orientalis が分布しており、一般的にケラと言うとこの種を指すことが多いです。

形態

成虫の体長は30mm程度ですが、大型種では50mmに達するものもいます。体色は褐色で、金色の短い毛が密生しています。他のキリギリス亜目の昆虫と比べて、触角や脚が短いのが特徴です。頭部と前胸部は卵型で、後胸部と腹部は前胸部よりも幅が狭くなっています。尾端には触角ほどの長さの尾毛が2本あります。

成虫には翅があり、前翅は短く、後翅は長いです。オスは前翅に発音器官を持ち、メスもわずかに発音できます。

穴掘りへの適応

前脚は太く頑丈に発達しており、モグラの前足のような形をしています。この前脚で土を掻き分け、地中を進みます。頭部と胸部がまとまって楕円形を構成し、全身が筒状になっていること、体表面に細かい毛が密生していることも、地中生活に適応した特徴です。これらの特徴はモグラと共通していますが、モグラは哺乳類であり、ケラとは全く別の動物です。しかし、前脚の形状が似ているのは収斂進化の例として知られています。ケラ属の学名である Gryllotalpa は、コオロギを意味する Gryllo とモグラを意味する talpa を組み合わせたものです。英名も同様に「モグラコオロギ (Mole cricket)」と呼ばれています。

生態

ケラは、草原や田畑などの土中に巣穴を掘って生活します。巣穴は、ねぐらとなる縦穴と、餌を探すための横穴で構成されています。湿った土壌を好み、地表には横穴が盛り上がって走っているのが見られることもあります。成虫も幼虫も雑食性で、植物の根や種子、他の昆虫、ミミズなどを食べます。また、共食いもすることがあります。水分や飢餓に弱く、水分が得られないと短時間で死んでしまうことがあります。

ケラは、園芸植物の根や地中性の農作物を食害するため、害虫とされることがあります。しかし、代掻き時には水面に浮かんでくるため、比較的簡単に見つけることができます。水面では、全身の短毛が水を弾き、脚で水を掻いて泳ぐことができます。また、地中生活をする一方で、後翅を広げて飛ぶこともできます。オスは初夏によく鳴き、地中から大きな鳴き声を響かせます。メスもわずかに鳴きます。

卵は泥でできた繭状の容器の中に産み付けられ、親が保護します。孵化した幼虫は、しばらく集団で生活した後、親の巣穴を離れて分散します。天敵は鳥類、カエル、イタチ、タヌキ、モグラなどで、特にムクドリはケラをよく食べることで知られています。

分類と分布

ケラ科は Gryllotalpa 属、Neocurtilla 属、Scapteriscus 属の3属に分けられます。Gryllotalpa 属は地中海沿岸からアジア、オーストラリアにかけて分布し、Neocurtilla 属と Scapteriscus 属は南北アメリカ大陸に分布します。日本には Gryllotalpa orientalis が分布しています。

文化

ケラは食用や民間療法の薬として利用される地域もありますが、日本では害虫として扱われることが多いです。所持金がない状態を「おけら」と表現したり、器用貧乏な様子を「おけらの七つ芸」と表現したりするなど、あまり良い意味では使われません。しかし、子供のおもちゃとしては、掌で握ると前脚で指の間を掻き分けようとする様子が楽しまれています。

ケラは、地中を掘り進み、水上を泳ぎ、空を飛び、地上を歩くことができる、非常に適応能力の高い昆虫です。その多様な生態と文化的な側面は、私たちに多くの興味深い視点を提供してくれます。1000文字以上1400文字程度。

もう一度検索